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いつもみたいに
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刑事物のドラマとかで
犯人に刺されそうになった部下を
上司がかばうシーンとかよく見る
だけどそれはテレビの中の話であって
現実で仲間がそんな危機に遭遇しても
他人の為に自分の身を犠牲にしようなんて思わない
人間なんて、本当の恐怖に直面したら
体は硬直して動かなくなるものだ
現実味の無いテレビの中の話を
僕はソファに座って何気無く見ていた
実際にそんな事起こるはずがない。
そう思いながら
「・・・・っ・・・」
目の前が真っ暗で何も見えない
氷崎という男が僕を刺そうとした瞬間
「大丈夫か?」
秋人君が、僕の前に来て・・・
「あき・・・ひとく・・・」
目の前が真っ暗なのは
秋人君に強く抱き締められてるから・・・
僕の頭の後ろに手を回して、何も見えないように
秋人君は僕の顔を自分の胸に押し当ててる
「菅原ぁ〜、邪魔すんなよ」
氷崎という男がそう言いながら笑う声が聞こえる
そのあと秋人君の咳き込む声・・・
心臓が壊れそうな程跳ねる
息が詰まりそうな感覚がする
「あ、ぁああきひとくん」
「大丈夫だ。もう大丈夫だから」
いつもの秋人君の声が頭の上から降ってくる
だけど、僕を抱き締める力がどんどん弱くなってる
秋人君の足はフラフラしてる
僕はゆっくり秋人君の背中に手を回した
「っ!!」
手を上へと上げて行くと左手がぬめっとした
硬く冷たい物が秋人君の背中に突き刺さっている
「ぁ・・・秋人、君・・・」
こんなのドラマの中の話だ
「ゴフッ・・・っ・・・大丈夫だ」
こんな事実際起こるワケない
「血っ・・・血が・・・」
体がまたガタガタと震え出し
触れた生々しい血の感触と熱に体の力が抜ける
「あき、ひ、とく・・・」
呼吸が出来ない、怖い、怖い
「忍、大丈夫・・・大丈夫だって」
「っ・・・うぐっ・・・」
秋人君は僕を抱き締めたまま
何度もそう言って頭を撫でて来た
「もう大丈夫だからな・・・」
・・・大丈夫じゃないよ・・・
「う・・っ・・・ヒック・・・」
どうして・・・何で僕なんかの為に
「もう大丈夫だって・・・な?落ち着けって」
「ど・・・してっ・・・」
涙が止まらない
どうしていいか分からない
ただ秋人君の胸に顔を埋めて
僕は泣く事しか出来ない
体が動かなかった
「・・・怖い思いさせてごめんな」
「・・・うっ・・・ぐ」
「帰ったらさ・・・ちゃんとクリスマスパーティーしような」
「・・・ヒック・・ぅっ・・・グズ」
「ケーキ作ったんだ・・・特大サイズの・・・」
「ヒック・・・秋、人君・・・」
「泣く、なって・・・泣き虫には・・・
・・・サンタ来ねえ・・・ぞ・・・」
ふっと笑って、また秋人君は僕の頭を撫でた
「・・・・・」
「・・・・・・へ?」
そして、僕の頭からずるりと手が滑り落ち
秋人君の体重が一気に僕に掛かってきた
支え切れず、僕は秋人君とそのまま後ろに倒れ込んでしまった
「・・・秋人君?・・・」
「・・・・」
目の前が明るくなって、自分の左手を見ると
赤黒い液体がびちゃっと手に染み渡っている
部屋の隅からつっちーさんや
カワちゃんさんが秋人君を呼ぶ声が聞こえる
「あ・・・秋人君・・・」
僕にもたれかかったまま
動かなくなる秋人君の背中を見ると
怪しく光るナイフが血を纏って
秋人君の背中に突き刺さっている
「う・・・そだ・・・」
目が閉じれない
開いた口が塞がらない
「嫌だよ・・・そ、んな・・・秋人君・・・」
「・・・・・・」
「ねえ秋人君・・・」
「・・・・・」
「っ・・秋人君・・・あき、ひとくん・・・」
「・・・・・」
返事が無い 頭からの出血も酷い
肩を揺すって何度も名前を呼んでも
秋人君は何も言わなかった
心臓は動いてる脈はある
息もしてる
大丈夫・・・大丈夫だよね?
だって秋人君大丈夫って言ってた
「ねえ、ってば・・・」
だからいつもみたいに笑ってよ
「秋っ・・・人君・・・」
いつもみたいに、僕が名前を呼んだら
嬉しそうに返事をしてよ
笑って僕の頭、撫でてよ・・・
「嫌だ・・・嫌、だよ・・・秋人君・・・」
なんで返事してくれないの
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