アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
今度は僕が
-
秋人君が倒れた後、氷崎という男は
秋人君の背中からナイフを抜き取った
ナイフが刺さっていた場所は
背中の右側で腰よりも少し高い位置
もしも秋人君が僕をかばってくれなかったら
もしかしたら今頃ナイフは
僕の心臓付近に突き刺さっていたかもしれない
そう考えるとまた怖くて体が震え出した
「っ!」
駄目だ・・・しっかりしなくちゃ
「てめえ何してんだよ」
「・・・っ・・・ヒック」
嗚咽が漏れる
怖くて息をするのも苦しいけど
落ち着け、僕がしっかりするんだ
抜き取ったナイフを手に持ち
冷たい視線を落としてくるこの男を横目に
僕は秋人君の体をゆっくりとうつ伏せに寝かせた
「止血・・・止血しなくちゃ」
ドクドクと血が溢れる傷口に
僕は足元に落ちていた秋人君のマフラーを押し当て
全体重を乗せて傷口を圧迫した
押し当てると、やがてマフラーに
赤黒い血がジワリと滲み出した
「・・・っ・・・ぅ、ぐっ・・・」
怖い・・・手が震える
力が出せない
でもいつまでも泣いてる暇なんてない
このままで良いわけない
「大丈夫だよ・・・秋人君・・・」
“大丈夫” 何度もそう言って
僕を安心させようとしてくれた
「っ・・・大丈夫・・・だよ」
僕は臆病で弱虫で泣き虫だ
「絶対、大丈夫だから・・・うっ・・・」
そんな僕に秋人君はいつも笑い掛けてくれた
こんな状況の中でも
秋人君は僕と目が合う度に
大丈夫だって微笑んでくれた
「っ・・・グズ・・・だい、じょうぶだよ」
だから今度は、僕が笑い掛けるから
秋人君が笑い掛けてくれたその何倍も笑ってあげるから
秋人君がもう心配しなくていいように
僕だって秋人君の事ちゃんと安心させてあげるから
「だからお願い・・起きて・・・っ・・・」
秋人君が目を覚ましてくれないと
その証拠を見せれないよ
「っ、ぅぐっ・・・ヒック・・・」
秋人君が返事をすることは無かった
ぎゅっと押し当てたマフラーだけが
赤く染まっていく
「氷崎さん、ちょっとこれはやり過ぎじゃ・・・」
「血の量やばくね?・・・」
「お、おい・・・どうする?」
周りの奴等もこの状況に戸惑いを表し始めていた
「はぁ〜。うるせえなあ。
急所は外してやったんだから大袈裟に騒ぐな」
!?
その言葉に、心臓がドクンと跳ねた
「なっ・・・」
外してやったって・・・どういう事?
まさかと思い顔を上げ
氷崎という男へと目をやると
僕を見下ろしたままにやりと笑った
ナイフを持ったままあざ笑うそいつの顔を見ると
全身がゾクっとし、怒りが込み上げてきた
「わ・・・ざと・・・」
「あ?」
この男は、秋人君が僕をかばうと分かっていた
分かっていたのに・・・刺した
「なんだよその目」
「っ、・・・」
怒りで頭がどうにかなりそうだった
でも僕なんかが睨んだところで
何が出来るわけでも、状況が変わるわけでもない
「くっ・・・う、・・・」
今は秋人君を助ける事だけを考えろ
「さてと。ほれ真面目君よ」
「!?」
必死に傷口を圧迫していたら
いきなり僕の耳元に携帯電話が当てられた
これは、秋人君の携帯
「渋谷に電話しろ」
「え・・・」
渋谷君に電話?・・・
「助けに来いって言えよ」
助けに・・・助けを呼べる・・・
「菅原もこのままじゃやばいよなぁ?
早く誰か助けに来てほしいよなぁ?」
「あき、ひとく・・・」
秋人君の出血は本当に酷い
このまま止まらなかったら命が危ない・・・
「な?渋谷はすぐ来てくれるぜ?
お前渋谷とお友達なんだろ?」
「!?」
にやりと笑いそう言ったこの男は
ポケットから数枚の写真を取り出し僕に見せて来た
「こ・・・れは・・・」
その写真を見ると目を見開いてしまった
そしてこの男が何をしようとしているのか検討がついた
「ほら、電話しろ」
「・・・っ・・・」
低く重い声でそう言われ
僕は下唇をぎゅっと噛んだ
やがて発信ボタンが押され
コール音が鳴り響く
そしてすぐに、電話に出る音が聞こえた
『秋人!?』
「・・・・・」
渋谷君の声が聞こえる
酷く慌てていて、その後ろから数人の男の人が
秋人君を呼ぶ声が聞こえる
「・・・し、渋谷君」
『なっ、大崎!?』
助けを呼べる
渋谷君ならきっと来てくれる
『大崎!秋人と一緒か?無事か?』
だけど、これ以上この男の思うようにさせてはいけない
「い、一緒だよ・・・秋人君と一緒に居、るよ」
『怪我してねえか!?今から助けに「今ね」』
『え?』
「今・・・秋人君と家でクリスマスパーティーしてる、んだ」
これ以上、目の前で友達が傷付けられるのは見たくない
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
238 / 617