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頼る側
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本当は誰でもいいから
すぐにでも助けに来てほしい
早く秋人君を病院に連れて行かなくちゃいけない
このままだと出血多量で秋人君は・・・
『お、大崎?』
「・・・・」
秋人君が死ぬなんてそんなの嫌だ
だけど、ここに渋谷君を呼んじゃ駄目だ
秋人君が言ってた様に
この男の本当の目的は渋谷君だ
『・・・頼む、本当の事言ってくれ』
「・・・・」
この男に見せられた写真は3枚・・・
僕と会長と上城先輩の写真だった
『秋人は無事か?』
「っ、」
秋人君の事を聞かれて心臓が跳ねる
血はまだ止まってない、反応もない
だけど僕は無事だと嘘を付いた・・・
氷崎という男は、渋谷君の周りの人間を
今日みたいに襲うつもりだ
「渋谷君・・・」
一刻も早くここから出たい
早く助けに来てほしい
「そ、そういえば・・・あの時の
ノートのお礼ちゃんと言って無かったね」
『ノート?』
でも呼んじゃ駄目だ
秋人君が渋谷君にこの事を
知られたくないって言った意味が分かった
「・・・ありがとう」
『大崎?お、おい・・・』
渋谷君は友達の為ならきっと何でも出来る
出来てしまう
「ぼ、僕・・・先輩の事、好きだったんだ」
『え?』
上城先輩が好きだったから
先輩と付き合う事になった君を
僕はどうしても認めたくなかった
秋人君の事を任された時だって
何も知らないくせにとか
なんで僕がそんな事・・・って考えて
勝手に腹を立てていた
そうやって本当はずっと君に嫉妬してた
「でも、もう大丈夫・・・だよ」
『っ何言ってんだよ、大崎・・・』
「秋人君は僕に任せて・・・
僕がずっと秋人君の隣に居るから」
僕は今まで誰かの影にコソコソ隠れていた
いつも目立たない様にして
自分の意見さえもちゃんと言えなかった
心の中でどれだけ言葉を返しても
何も相手には伝わらないのに
「・・・っ・・・ぅ、ぐっ・・」
『大崎!?どうした!?』
でも秋人君と居る時は
いつもと違った自分になれていた
少しずつだけどなりたい自分になれてた
感情的になって、怒ったり笑ったり
初めて自分の気持ちを伝える事だって出来た
だけど僕が初めて伝えた言葉は
僕を好いていてくれた秋人君を裏切る酷い言葉だった
『秋人は?大崎!頼む秋人と話をさせてくれ!』
「っ・・・あき・・・ひとくん・・・」
なのに秋人君は怒りもせずに
もう一回友達からやり直そうって
笑って言ってくれた
「ヒックっ・・・秋人、君・・・」
僕は秋人君に言わなくちゃいけない
もう一度気持ちを伝えなくちゃいけない
『泣くな!大崎!今助けに行くから!』
「・・・ッグズ・・・ゔっ」
電話の向こうから、渋谷君の力強い声が聞こえる
走ってる様な音もする
渋谷君はここに向かって来てる
助けに来てくれてる
「渋谷・・・く、ん・・・」
『大丈夫だから待ってろ!』
秋人君みたいな安心出来る声だった
「僕と・・・友達になって、くれて・・・
・・・ありがとう・・・」
『な・・・』
友達という存在がこんなに心地よくて
声を聞くだけで安心出来るものだなんて思わなかった
ちゃんと僕自身を見てくれて
そばに居てくれた
友達が危ないと知れば
息を切らしながら全力で走って来てくれてる
だけどここに来れば同じ事の繰り返しだ
人質が居る以上、渋谷君はきっとこの男に手は出せなくなる
「お、願い・・・お願い・・・渋谷、くん・・」
傷付けたくない。僕だって守りたい
でも今の僕には何も出来ない
頼る事しか出来ない
誰かを守る力なんて今の僕にはない
『大崎?・・・』
「・・・ぅ、っぐ・・・」
だからどうか、僕の大事な人を
秋人君だけでも・・・
「・・・秋、人君を・・・助け、て・・・」
ここから助け出してほしい
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