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知らない
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店の外に出ると、パトカーが沢山止まっていて
警察の人が店から逃げようとしてる
あの不良達を取り押さえていた
怪我人として僕達は救急車で運ばれ
近くの病院へと搬送された
主犯だった氷崎と言う男も
僕達と同じ病院に運ばれたらしい・・・
秋人君はすぐに手術が必要だと言われ手術室に運ばれた
手術が始まってもう3時間が経つが
赤い点灯が消える様子はない
手術室の前で両手を握り締め
僕はただただ祈った
僕達も怪我の治療が必要だと言われたけど
手術が終わるまでここに居させて下さいと言うと
お医者さんは了承してくれた
カワちゃんさんとつっちーさんは
別の病院に搬送されて治療を受けていると聞いた・・・
「そっか。お前秋人のダチだったのか」
「・・・う、うん」
僕の目の前の壁に背中をつけて
渋谷君は腕を組みため息をついた
「渋谷君・・・」
「なんだ?」
「・・・その・・・」
声を掛けたが、すぐに僕は黙ってしまった。
そして頭の中で3時間前の事を思い出す
・・・渋谷君が来てくれなかったら
あのままどうなっていただろう
だけどあの時の渋谷君は怖かった
氷崎という男にやられそうになってた時
渋谷君は一瞬気を失った様に見えた
すぐに目を開いたと思ったら
そのままあの男を・・・
「・・・!」
あの時の渋谷君の楽しそうな顔を思い出すと
背筋がゾクっとした
「おい、どうした?」
「い、や・・・えっと・・・」
笑ってた
人を殴って、あの男の腕を
何の躊躇も無く渋谷君は折った
「なんだよ」
「あ、な・・・なんでも、ないです」
「??」
本当はちゃんと聞きたい。確かめたい
だけど僕を見る渋谷君の目は
以前のような綺麗な瞳には見えなかった
さっき、お前は秋人君の何だ?と聞かれた時
僕は暫く目を見開いたまま黙り込んでしまった
黙っていたら、急に胸倉を掴まれ
早く話せと睨みを効かされた
僕はガタガタ震えながら
これまでの秋人君との事を話した
話の中で渋谷君との事も話したのに
『俺はお前の事は知らねえ』の一点張りで
結局渋谷君は僕との事をなに一つ覚えてなかった
「大崎・・・だっけ?」
「は、はい・・・」
渋谷君はあの時強く頭でも打ったんだろうか・・・
まさか、本当に僕の事が分からないだなんて
「その・・・殴って悪かった」
「へ?」
渋谷君は腕を組み下を向いたまま
小さい声でそう言った
「秋人のダチって知らなかったんだよ。
殴ったりして・・・わ、悪かった」
「・・あ・・・だ、大丈夫ですよ」
秋人君のダチ・・・
「・・・・」
「・・・・・」
・・・君とも友達なんだよ
「・・・っ・・」
そう言いかけて、僕はその言葉を飲んだ
これは一時的なものなのか?
記憶喪失ではないはずだ・・・
僕の事だけを忘れるなんて
そんな都合が効く記憶喪失なんて聞いた事が無い
でも、じゃあなんで僕の事が分からないんだ?
「あ・・・あの、渋谷君」
「ん?」
そんな事を不安に思いながら
僕はポケットの中からある物を取り出した
「なんだそれ」
それを渋谷君の前に出すと
首を傾げられてしまった
「え、あっ、渋谷君のじゃないの?」
「いや俺のじゃねえよ」
「・・・え・・・」
そう即答で返され、少し困ってしまう
取り出したものは、四角形の小さな箱で
青いリボンが巻かれている
きっと誰かへの贈り物なんだと・・・思う
踏まれたりして見た目はもうグシャグシャだけど
渋谷君のポケットから転げ落ちたとこを見てたから
僕は店を出るときに拾っておいた
だけど、違うと言われてしまった
「誰かへの・・・プレゼント」
「は?」
プレゼント・・・プレゼント・・・
「あっ!!」
少し考えを巡らせると
明日がクリスマスだという事に気付いた
「や、やっぱり渋谷君のだよ!」
「だからちげえよ!」
明日は先輩の誕生日だ
「せ、先輩にあげるんでしょ!?」
「はぁ?誰だよ先輩って」
「なっ・・・」
はっきりとそう言った渋谷君を見て
僕はまた目を見開いた
「先輩、だよ・・・上城先輩・・・」
まさか、僕以外の人も分からないって言うのか?
「かみしろ?誰だよそれ」
「!?」
・・・いや、そんなわけない
「じょ、冗談はやめてよ」
「冗談?」
「・・・・」
本当は冗談・・・だよね?渋谷君・・・
なにしらばっくれてんの、ふざけないでよ
「じゃ、じゃあ会長の事は?
・・・日野先輩に、舞園先輩は?」
「なに?お前の友達か?」
「・・・・・っそ、だけど」
分からないのは、僕の事だけじゃないのか?
「渋谷、君・・・」
箱を少し握り締め、僕は下を向いたその時
「君達、少しいいかな?」
「・・・へ・・・?」
警察の人に呼ばれてしまい
僕は一度視線を渋谷君から外した
二人の警官が立ってて
僕と渋谷君を見て手招きしてる
「はぁ・・・」
渋谷君は息を吐いて警官さんの方へと歩き出した
「お前どうする?」
「・・・・」
そう聞かれ、僕はまた下を向いた
「ここに、居る・・・」
「・・・・そっか」
恐らく呼ばれたのは事情聴取だと思う
だけど今はここから離れたくない
「そんな顔すんな」
「っ、ふぇ?」
秋人君の事を考えたらまた不安になって
涙が出そうになった時
いきなり渋谷君が僕の頭を撫でてきた
「秋人はあれくらいで死ぬような奴じゃねぇよ」
「・・・・」
「警察には俺が言っといてやるから、
お前はここに居てやってくれ」
「・・・・・っ・・・う、ん」
笑いながら、頭を撫でられる
渋谷君が秋人君と重なってまた涙が出そうになった
「男だろ。泣くな」
「・・・・は、ぃ・・・」
「うし。んじゃまたな。」
「・・・・」
最後にグシャっと僕の頭を撫で
渋谷君は行ってしまった
「秋人君・・・」
渋谷君の事も心配だけど
今は秋人君が一番心配だ・・・
「大丈夫だよ。僕がついてるから」
絶対助かる。大丈夫。
そう何度も唱え続けた
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