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本当は
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病院であいつは俺にキスをして
そのあと酷く辛そうな顔をした
そして俺から離れて行った後すぐに
頭が急に痛くなった
暫く激痛に耐えていたら
断片的に色んな物が頭の中に流れた
最後に見えたのは、さっきの男が
俺に向かって『愛してる』と言ってる姿
「・・・・・め・・・がね」
頭の痛さがプツンと切れた途端
全部思い出せた
大崎の事も会長も、部長さんに巨人・・・
「・・・成海・・」
あいつとの事だって全部思い出した
「行くな・・・成海!」
あいつを追いかけようとした
だけどすぐに走る足を止めてしまった
「・・・・」
何で忘れてしまってたんだと考えると
昨日の秋人の姿が目の前に広がり
氷崎が言っていた言葉を思い出した
「・・・・っ・・」
『全部壊してやる』
氷崎にそう言われた時
床に倒れる秋人と同じように、体中血まみれで
床にぐったりと倒れ込む眼鏡の姿がイメージとして流れて来た
そのあとに会長、大崎・・・
「・・・駄目だ・・」
ここであいつを引き止めたら・・・
追い掛けたら駄目だ
そう思い、唇を強く噛んだ
「渋谷君!」
「・・・・・」
病室に戻ると大崎が心配そうに俺の事を見てきた
俺の顔を見るなり眼鏡と殴り合いしたのか?って
更に心配そうな顔をするから
殴り合いはしてねえと言った
「あいつは二度とここに入れるな」
「・・え・・・」
本当はもう全部思い出せてる
でも俺は忘れたふりをした
病室にあった眼鏡へのプレゼントを手に取ると
これを渡した時嬉しそうに笑う眼鏡の顔が頭に浮かんだ
AとM・・・これ見たらお前は笑うよな?
プレゼントにまでお前の名前ちゃんと彫ってやれねえとか・・・
「・・・俺のじゃねえ」
これはあいつの物なんだ
俺のものじゃない。
渡してやらねえといけないのに渡せない
「ど、どどどどこ行くの?」
「土屋達のとこ。」
箱は持たずに、俺はそのまま病院を出た
今日はあいつの大事な日
大事な奴の事を忘れてしまってた上に
あいつを殴ってしまった
本当は会いたい
今すぐ会ってさっきはごめんって言いたい
抱き締めて誕生日おめでとうって言ってやりたい
でも駄目なんだ
俺があいつと居ると・・・会長達と居ると
また昨日みたいな事が起こってしまう
「・・・」
このまま、忘れたふりをして
あの人達から離れなくちゃいけない
昨日警察が取り逃がした不良が
まだ街をウロウロしてるはずだ
そいつらを一人残らず見つけて
全部俺が終わらせる
そいつらがあの人達に近付かないように
昨日みたいな事にならないように・・・
だけど、どうしても今日だけは
今日が終わる前に一度
あいつに会っておきたかった
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