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あげる
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「え・・・・」
新が必死に呟いた言葉が心臓に重くのしかかった
一度大きくドクンと鼓動が跳ねると
次第に速さを増して自分の心臓の音が耳まで響いてくる
「今・・・何て・・・」
「・・・っ」
いや、でも聞き間違いかもしれない
さっきの新の声は本当に小さくて
聞き取れなくてもおかしくない程の声の大きさだった
だから聞き間違いかもしれない・・・
もう一度言ってと言うと
新の体が震え出し、一層体が小さく縮こまった
「・・・・・」
「・・・」
新がもう一度その言葉を口にする事は無く
震える体がその言葉の意味を言っているようだった
「樹が・・・」
「っ!」
樹の名前を呟くと、新の体がビクッと跳ねた
そしてまた泣き出してしまい
何かを必死に言おうと嗚咽を零しながらも新は口を開いた
「・・俺・・うっ、・・抵抗、出来なくて・・」
「・・・・」
「っズ・・お前、に言うの・・・ヒック・・怖、くて」
「・・・」
「ごめん・・ゔっ、・・ごめ・・」
「・・・・・」
何度もごめんと謝りながら
新は膝に顔を伏せて俺から少し離れてしまった
「ごめ・・っんなさい・・・うっ・・ごめ・・」
「・・・・」
言葉が出なかった
完全に頭の中の思考が止まっていた
樹が新を犯した?
いつ?こいつが俺に泣いて電話をして来た時か?
「・・ヒッ、ク・・・ふ・・・ぅ」
「・・・・」
まさか・・・樹がそんな事する訳ない
「成海・・・っう・・なる・・み」
ガタガタと肩を震わせながら
新はゆっくり顔をこちらに向けた
そして目に涙を溜めて震える声で俺の名前を呼んだ
「新・・・」
俺が名前を呼ぶと
新の目から大粒の涙が湯船にボタボタと落ちた
「新」
もう一度名前を呼んで振り向いた新を引き寄せると
新は俺の胸に頬をピタリとくっつけた
嗚咽と体の震えが振動となって
重なった肌から俺へと伝わってくる
「・・ゆっくり息しろ・・落ち着け」
背中をゆっくりと撫でながら
少し呼吸が乱れ始めた新にそう言った
正直、冷静を保てないくらいに
俺は今頭の中が怒りでいっぱいだ
「新・・・深呼吸しろ・・息吐いて」
でも怒りは新へじゃない
「っグズ・・・ぅっ・・俺・・きた、ない・・」
「汚くねえよ」
なんでこいつが
こんなに辛い思いしなくちゃいけないんだ
「お前は汚くない。ほら、ちゃんと見せて」
「ゔ・・・ぐっ・・・い、やだ」
胸に鉛がのしかかった感覚は消えない
樹が新に触れて最後までしたと考えるだけで
頭がどうにかなりそうだった・・・
氷崎の時とはまた違った怒り
俺だけが知ってるはずだったこいつの体を
樹が・・・抱いた
「・・・っ・・・グズ・・・」
「大丈夫だから・・・体見せて」
だけど今は怒りなんかより
自分はもう汚いと泣き崩れる新を宥めてやらないといけない
「ほらな?どこも汚くなんかないだろ?」
少し体を離して新の体を見つめ俺はそう言った
見慣れた新の綺麗な肌・・・
何度も俺と肌を重ねた愛しい新の体
「ぅっ、・・・ほん、とか?・・」
「・・・ん。綺麗だ」
それを・・・あいつが犯した
そう考えるとまた心臓がドクンと脈を打ち
俺は下唇を噛んだ
「っ・・・」
・・・・・・許せない
助けに行けなかった自分が許せない
新を残して先に帰ってしまった自分が許せない
樹なら大丈夫だって、どこか安心して
新を任せてしまった自分が・・・許せない
「ごめんな・・・」 怖かったよな
ポンと新の頭に手を置いて
ゆっくりとまた抱き締めた
心臓の音が響いてくる
俺と同じくらいの速さの新の鼓動
「・・・怒って・・ないの、かよ・・」
「怒ってないよ・・・」
そう呟き、今度は強く抱き締め
新の肩に顔を伏せた
「でもごめん・・・ちょっとこのままでいさせて」
少しだけ声が震えた俺が腕に力を入れると
新も腕に力を入れてぎゅっと抱き締め返してくる
「・・ズッ・・・ほんとに・・怒って・・ない?」
「怒ってないよ。」
またそう聞いてきた新に
俺は同じように怒ってないと答えた
俺がそう答えると新はまた涙を零して
体を擦り寄せてくる
「・・・」
怒ってない。
お前に対しては何一つ怒ってないよ
嘘を付いてしまった気持ちも分かる
俺に話すのは怖かったよな・・・
それに気付いてやれなかったのは俺だ・・
お前の恋人なのに、大事な時にいつも助けてやれてない
側に居てやれてなかった・・・
「新・・・」
気持ちを少し落ち着かせ
一度体を離して新の顔をじっと見つめた
涙で潤む瞳に俺が写ってる
「樹と話してもいいか?」
「え・・・」
そう言うと新の顔が一気に青ざめていく
多分、樹とこの話しをしたら
俺があいつを殴ると思ってる。
俺と樹の仲が壊れてしまう事を
新は一番怖いと思ってる・・・
「お前が心配してるような事にはならないよ。
話しをするだけ。な?・・・」
「・・・っ・・・」
優しく頭を撫でると、新はコクっと頷いた
「・・氷崎の事も、俺に任せてくれねえか?」
「っ・・・駄目だ!!」
だが氷崎の名前を出すと
新はさっきとは打って変わり大声を上げた
「あいつは・・俺が・・」
拳に力を入れて下を向く
そんなこいつを見て俺はふっと笑みが零れ
また頭を撫でた
「頼れって言っただろ?だから俺に任せてくれよ。」
「・・・・」
「・・新?」
「・・・・・・っ、わか・・・た」
「ん。ありがとう」
にこりと笑い掛けまた抱き合う
樹と氷崎・・・それぞれ二人の事を抱えていた
こいつの胸の重みを俺が無くしてやりたい
いや・・・俺がやらなくいゃいけない
ちゃんとこいつを守ってやらないといけない・・・
「いい匂い・・・する・・・」
「え?」
「お前と一緒の匂い・・・体中包まれてるみてえだ」
「・・・そうだな」
少し安心した新の声とその表情を見て
俺も少し安心出来た
風呂場の中に充満する湯けむりと
お互いの髪から香る同じシャンプーの匂い
裸で抱き合い
吸い付く肌の感触が心地いい
ずっとこうやって居れたらいいのに
「・・・誕生日・・」
「ん?」
そう考えていたら新が何かを呟いた
「ほんとは・・プレゼント、ちゃんと用意してる」
「プレゼント?」
「けど・・・今は渡せねえ・・・」
「いいよ。気持ちだけで嬉しいから」
「駄目だっ!・・・ちゃんと渡すから」
「・・・・」
火照った顔のまま上目遣いで新は俺を見上げる
「分かった。楽しみにしてる」
ポンポンと頭を軽く叩き
のぼせるといけないからそろそろ上がるかと
立ち上がった時だった
「??・・・どうした?」
「・・・・・」
立ち上がろうとしたら
新は俺の腕を掴んで来た
のぼせたのか?と聞くと
新は顔を真っ赤にして涙目になった
「用意したプレ、ゼントは・・・今は渡せない、けど・・・」
「・・・?」
カタカタと手が震えてる
それでも俺の腕を掴む力は強かった
口元をガチガチに震わせながら
何を言おうとしてるんだ?・・・
そっと顔を近付けると
新は小声でボソっと何かを呟いた
「お・・俺・・・あげる」
「!?」
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