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ちゃんと見えてる
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眼鏡が呟いた言葉を聞くと
あの時の事を鮮明に思い出してしまった
ドクンと大きく心臓の音が鳴って
耳元で会長の声が聞こえた気がした
「新」
「ぁ・・あ・・」
会長の声と眼鏡の声が二重になって聞こえて
俺の腕に触れた眼鏡の手が会長の手に見えた
「・・や・・めて下さ・・」
「・・・・」
思い出したくない
なのに眼鏡がだんだん会長の姿に見えてくる
「・・・新」
「ひっ!」
今度は頬に手が添えられ体がビクッとした
自分の体を強く抱き締めて
眼鏡から離れて壁に背中を付けた
『どんな風に』『抱かれた』
「っ・・ぁ・・いや、だ・・」
思い出したくない
「嫌だ・・・」
言いたくない
「新」『新』
・・・っ嫌だ・・怖い・・
「・・っ・・・」
真っ暗な視界の中で
あの時、会長はお前の様に俺を抱いた
やめて下さいと何度叫んでも
会長はやめてくれなかった
体中痛くて、寒くて・・・
辛そうな声であの人は何度も俺に好きだと言った
俺があの日、もっとちゃんと警戒していたら
もっとちゃんと会長の気持ちに気付いてやれていたら
きっとあんな事にはならなかったんだ
本当の会長はあんな人じゃない
優しくてあったかくて一緒に居ると安心出来る
眼鏡とは違う好きだけど
会長は俺の大好きな人なんだ
「思い・・・出したく・・ない」
「・・・・」
だからもうあの日の事は思い出したくない
大好きな会長を嫌いになんてなりたくない
「思い出して」
「っ!?」
必死にあの日の事を消し去ろうとしていたら
眼鏡の声が耳元ではっきりと聞こえた
顔を掴まれ無理矢理上を向かされる
ぼやけていた視界が定まって
会長の顔がだんだん眼鏡の顔に戻って行った
「めがね・・・」
俺の大好きな人
優しい手の温もりと
「新」
優しい声
「・・・!?」
眼鏡に抱き締められると
頭の中から会長の声が消えた
「思い出すのは怖いよな・・・嫌だよな」
「・・・」
「俺だって嫌だよ・・・お前が俺じゃない奴に
抱かれたって考えるだけでどうにかなりそうだ」
「・・・・っ・・」
「だけど無かった事には出来ない」
「・・ぅ・・・でも」
俺は・・・無かった事にしたい
あの日の事は全部忘れたい
そうでもしないとお前に抱かれる度に
会長を思い出してしまう
「お前、器用じゃねえだろ」
「へ・・・」
震えていたら、眼鏡が笑って俺の頭を撫でて来た
「俺の事、忘れてたのにすぐ思い出してくれただろ?」
「・・・それは」
「なのに樹との事だけ忘れるなんて
お前には出来ねえだろ?」
「・・・・・」
眼鏡が言った言葉に俺は下を向いてしまった
「お前が誰よりも優しいのは知ってるよ。
不器用で繊細で、周りが辛い思いしてたら
すぐ自分のせいだって思っちまう事も。」
「・・・・・」
「どんな相手にでも逃げねえで
真っ直ぐ向き合うのがお前だってのも」
「・・っ・・・んだよそれ」
俺はそんな強い奴じゃない
自分の事ばっか考えてて
辛い事からは逃げようとしてる
いつもお前の所に逃げてる
俺は・・・最低な人間なんだ
「最低は俺だけで十分だよ」
「!?」
また笑った眼鏡の声が聞こえ
そして眼鏡の言った言葉を聞くと心臓が止まるかと思った
心を読まれたみたいでゾクっとした
口が開いたまま塞がらない
「言ったよな?大事な奴の辛そうな顔は見たくないって」
「・・・え」
「全部俺にぶつけていいから話してほしい。
ちゃんと受け入れるから」
「・・・・」
笑ったこいつの顔を見るとまた涙が出そうになった
「もう一人にはしねえからさ。
お前の辛さ俺に分けてくれよ」
「・・っ・・・ぅ・・」
やっぱり・・・ムカつく
「な?」
「ゔ、ぅ・・っ・・」
視力悪いくせに
俺が見えないものは全部見えてる
「俺は逃げたりしねえし、お前から離れるつもりもない」
子供体温でコーヒー飲めなくて
めちゃくちゃ甘党なくせにっ
ガキなくせに・・・
「お前はどうなんだ?」
「・・ふ・・・ゔっ・・」
こういう時はいちいち大人っぽくて
言うこと全部で俺を包み込んで来る
「に、逃げ・・ねぇ・・・」
「それから?」
意地悪なくせに、変態ドS眼鏡のくせに
「・・離れ・・・ない」
お前から絶対離れたくないって気持ちが
その全部を許してしまう
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