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本当の友達
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病室を出た所でカワちゃんさんは立ち止まった
そして振り向いて僕の顔をじっと眺め
一度口を開いて何かを言おうとしたみたいだけど
開いた口をすぐに閉じて
カワちゃんさんはまた黙り込んだ
「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・」
「あの・・・え、と・・・・・」
沈黙が続き、何か言わなくちゃと口を開いたが
僕も同じ様に黙り込んでしまった
病室の前で、僕とカワちゃんさんが二人して下を向いて
お互い自分の手を弄ってる
カワちゃんさんはずっとキョロキョロしてて
何度か何かを言いかけたけど
言葉を発しようとするとすぐ口を固く閉じてた
「あの・・・カワちゃんさん」
もしかしたら、僕と同じで人見知りなのかな?
でも初めて会った時はそんな感じには見えなかったのに
「・・・っ・・・し・・のぶ」
「!?」
その時、声を絞り出すかの様に
小さな声でカワちゃんさんが僕の名前を呼んだ
「は、はいっ」
咄嗟に僕は背筋を伸ばして大きな声で返事をした
「・・・・あ・・・のね」
「ははははいぃっ」
必死に何かを話そうとするカワちゃんさんを見ると
なんだか緊張して声が震える
一体何の話だろうと思っていた時
カワちゃんさんが小さく呟いた
「おれと・・・友達、なって欲しい」
「え・・・」
「・・・・・」
友達?
予想もしてなかった言葉を聞いてぽかんとしてると
カワちゃんさんの顔が赤くなっていった
「おれ・・・忍好き。友達なって欲しい」
「あえ?んなっ、ななななっ何を急にっ」
好きだと言われて、僕も瞬時に顔が熱くなった
というより、友達になって欲しいって・・・
「ぼ、ぼぼぼ僕達っ友達じゃ、ないの?」
「・・・・」
そう言ったら、カワちゃんさんは目を見開いた
「え・・・友達・・だよね?」
「・・・・」
「・・・・・・」
あれ・・・まて、友達じゃなかった?
何この空気っ!なんでまた黙るのっ
だってつい最近まで友達オーラ出してたじゃないかっ
なのに友達になって欲しいって今更・・・
あれ、でも言われてみればいつから友達だった?
いつから僕は友達だと認識し始めてたんだ?
それとも今みたいに
友達って正式な申し込みで築き上げてく物なのか!?
「・・ふぁぁ」
目が回り始めた時、カワちゃんさんが僕の手を握って来た
「!?!?」
「・・・・・」
そして、目をぎゅっと閉じたまま
カワちゃんさんはまた小さく呟いた
「嫌われた・・・思った」
「・・・へ」
「怖い思いさせた・・・だから嫌われた、思った」
怖い思い・・・それは一昨日の事・・・
「忍・・・おれの事、好き?」
「ふえっ!?」
「・・・・・・」
「あっ、すすすす好きって・・・」
もちろん、友達としてだよね?
「・・・・う、ん」
「!」
頷いてそう答えると
カワちゃんさんの顔が明るくなった
「ほんとに?」
「え、う、うううううんっ!」
「!(喜)」
また嬉しそうに笑って
今度は握った手をブンブンと上下に振られた
「あ・・・あとね」
「??」
腕が取れるんじゃないかと思うくらい振られると
手をピタリと辞め、また僕の顔を覗き込んで来る
「・・・那央・・・好き?」
「え・・・?」つっちーさん?
「那央とも友達、なって欲しい」
小さくそう言うと、手をぎゅぅっと握られた
「那央・・・元気無い・・・ずっと忍の事気にしてた」
「僕の事?」
聞き返すと、カワちゃんさんはコクっと頷く
「合わせる顔無い・・・言ってた」
「・・・・・」
悲しそうな顔をしたカワちゃんさんを見ると
何を言いたいのかがようやく理解出来た
「カワちゃんさ・・・」
「??」
「っ・・・」
名前を呼び掛け、僕は一度口を閉じた
そしてカワちゃんさんの手を握り返し
頭の中で今までの事を思い出した
友達なんて今まで居なかったし
いざ出来た友達がみんな不良だった事が
僕は嫌で仕方なかった
僕の事なんか本気で友達だなんて
思ってもないだろうとか思ってた
「ふふっ」
「?」
それなのに今じゃそんな事考えなくなったよ
「カワちゃんとつっちーは僕の大事な友達だよ」
「!?」
笑ってそう言うと徐々にカワちゃんの顔が明るくなる
「カワちゃん!」
「!」
二人はちゃんと僕の事心配してくれてた
謝らなくちゃいけないのは僕だよ
今まで君達を遠ざけようとして
不良って事だけで君達を警戒して心を開かない様にしてた
裏では本当は何を思ってるんだ?とか勝手に詮索してた
信じない様にしてた
「つっちーの所に行こう!」
だから僕もちゃんと謝りたい
そしてもう一度、今度こそちゃんと
二人と本当の友達になりたい
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