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待ち合い室の入り口で
忍ちんがオレの胸倉を掴んで眉を釣り上げてる
大声はダメってさっき言ったんスけど
忍ちんはまた声を張り上げた
凄く怒った顔してるから
きっと一昨日の事を言われるんだと思った
「・・・・」
忍ちんから目を逸らし下を向いた
何を言われても仕方ない
殴られても仕方ない事をしたんだから
このまま忍ちんに殴られても良かった
そう思っていたのに
「ごめんなさい!」
「・・・・・・??」
忍ちんが叫んだ言葉はそれだった
「ご、ごめんなさい?」
びっくりしてオレは顔を上げ忍ちんの顔をじっと眺めた
忍ちんは小刻みに震えてて目を固く閉じてる
「え、あの・・・忍ちん」
というか、何で謝ってるんスか?
忍ちんが言ったごめんなさいは
こうやって転んでしまった事に対してじゃない
何かを必死に言おうと口を開けたり閉じたりしてる
その姿も、カワちゃんとよく似てると感じた
「忍ち「僕ね」」
「??」
忍ちんはまた口を開いた
「しょ、正直カワちゃんとつっちー苦手」
えっ!?
「初めて会った時は、二人とも変な人だって思った」
「え、あっ、忍ちん?」
「友達なんか要らないのに勝手に友達にされてて鬱陶しかった」
ひょえっ!?ちょ、まじっスか!?
いやというより、すっげぇ真顔になってる!
忍ちんが真顔!そして目がはっきり見える分
すげえ眼力ハンパ無いっス(泣)
さっきまで震えてたのに、どうしたんスか?
「・・・・あ・・」
やっぱり、怒ってるんっスよね
「つっちー?」
「・・・・・・」
今まで、忍ちんに鬱陶しがられてたのに
馴れ馴れしく付きまとった挙句あんな目に合わせたら
「すみません・・・」
そりゃ怒りたくもなるっスよね
「ふんっ(怒)!」
「いぢっ!?」
すみませんと謝った後、両頬を挟み込むようにして
バチンと忍ちんに叩かれた
手が離されると、ジンジンと頬が傷む
「話は最後まで聞く!勝手に謝らないで!」
「へ・・・」
顔を上げると、怒った顔をしてた忍ちんの目から涙が零れていた
「ぼ、僕ね、すっごい人見知りなんだ!
表では自分の意見まともに言えないくせに
心の中ではいつも人を馬鹿にしてた!」
「え」
「つっちーとカワちゃんの事だって
どうせ最低な奴なんだろお前ら。とか思ってた!」
「・・・・・」
「一昨日だって・・・あんな事になって
二人に関わらなければ良かったって思った」
「・・・・・・」
その言葉を聞いたら酷く胸が苦しくなった
『関わらなければ良かった』
オレが一番相手にそう思わせたく無かった事
「・・・・すみませんっス」
それを忍ちんに思わせてしまった
「ふんぬっ!(怒)!」
「いたたたっ!ちょ、忍ちんっ!?」
またすみませんと言うと
今度は両耳を思いっきり引っ張られた
「だから最後まで聞いて!」
「・・・・っ、はい」
すぐに耳から手を離して、忍ちんはまた話し始めた
「でもね、あんな怖い思いしたのに君達の事嫌いになってないんだ」
「え・・・」
「さっきもカワちゃんに友達になってほしいって言われた時
何言ってんの友達でしょ?って思ったんだ」
・・・カワちゃんがそんな事を
「嫌いになった?って聞かれても全然嫌いじゃないって思ったんだ」
「・・・嫌いじゃ、ない?」
声がだんだん震える・・・
いつもはこんなに堂々と喋らなかった忍ちんが
はっきりと声を張って喋ってる
「嫌いじゃないよ。ぼ、僕好きだよ。二人の事」
「・・・・」
嫌われてない・・・
「今は二人に会えて良かったって凄く思うよ。大事な事に気付けた。
友達なんて居なかったから友達がどんな物なのか分からなかったけど
怖い思いしたから友達やめるってのは違うと思うんだ」
「・・・・・っ」
「友達って凄いね。あんなに心の芯が細かったのに
友達が居ると心が骨太くなってる気がするよ」
「骨太・・・いいっスね。」
なんとなく、分かる気がするっス・・・
自分は一人じゃないって思わせてくれる
秋人さんや新さんがそうだった・・・
「だから秋人君に凄く感謝してる。
秋人君と出会って無かったら二人にも出会えなかったもん」
忍ちんはにこっと笑った
初めて笑った顔を見たからその笑顔を見た瞬間
自然と涙が流れていた
「つっちー、お願いがあるんだ」
「・・・っ、ふ・・ぅ」
名前の後の『さん』が消えただけで
オレの事を受け入れてくれた気がする
忍ちんは強くなってる
自分の事を相手にちゃんと言えてる
そして相手の事もちゃんと考えてくれてる
受け入れてくてれる
「これからも僕と友達で居て下さい」
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