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広がる輪
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「あ、新さんっ」
「!!」
つっちーとカワちゃんは渋谷君を見ると
その場に正座をしてびっくりした顔をしてる
「お前ら、踊る元気あるんなら大丈夫だな?」
「う、うっス!この度は迷惑掛けてすみません!」
「(汗)!」
二人共頭を下げて必死に謝罪してる
「馬鹿っ、人見てるだろやめろ!」
渋谷君・・・いつもと変わらない感じだけど
やっぱり僕の事忘れたままなのかな?
「大崎」
「はひぃっ!」
「!?」
「っ、・・・」
いきなり名前を呼ばれたかと思ったら
肩に渋谷君の手が置かれている
「な、なんでございましょう!?」
びっくりして体が一気に強張ってしまった
「あのさ、大崎」
「??」
何だろうと思っていたら
今度は渋谷君が深々と頭を下げた
「ごめん大崎!」
「ふえ?」
な、なんでごめん??
ていうかっ、渋谷君さっきつっちー達に
静かにしろって言ってたのに自分が大きな声出してるよっ
「えっと、あの・・・」
「俺、全部思い出した」
「・・・・え」
思い出した?・・・思い出したって
「大崎の事も、会長達の事も・・・もちろん眼鏡の事も」
「ほ、本当?・・・」
「うん。眼鏡に連れてかれた後、病室に戻った時には
本当は全部思い出せてた・・・」
先輩に連れてかれた後って事は
プレゼントを破って中身を見てた時には
思い出せてたって事・・・だよね?
「色々心配掛けてごめん。」
「あっ、だ、大丈夫だよっ」
思い出してくれたんだ。良かった・・・
「大崎・・・あの時のプレゼントまだ持ってるか?」
「へ?」
「あれ、俺のなんだ・・・あいつにちゃんと渡してやりたい」
渋谷君は顔を上げて僕の顔を真っ直ぐと見た
あの小さな箱に入っていたネックレスは
・・・やっぱり先輩へのプレゼントだった
「ふふっ」
「?」
僕に申し訳なさそうな顔をしてる今の渋谷君と
あのプレゼントを先輩に渡した時の渋谷君の顔
そして、プレゼントを受け取った先輩が笑ってる顔が浮かんで
僕はなんだか嬉しくなった
「大丈夫だよ。ちゃんと大事に預かってるから」
「ほんとか!?」
「うん。病室に置いてあるから取ってくるね」
「さんきゅ!ありがとう大崎!!」
渋谷君は目をキラキラさせて喜んでる
誰かの笑顔を見るのってこんなに気持ちの良い事なんだね
今まで前髪で目を隠して相手の目を見ない様にしてた
「ちょっと待ってて」
「おう!」
だけど今は視界が開けて、今まで見えなかったものが沢山見える
人の良いところを見つける事が出来るし
目を合わせて話すと心が通じ合ってる気がして気持ち良かった
暗かった世界がキラキラ光って暖かい
そう思えるのは全部きっと秋人君のおかげだよ
ずっと一人だった僕の周りを
暖かい人達で囲ってくれた
少しずつ自分が変われてる気がする
人と関わる事が楽しいなんて今まで思わなかったのに
「あ、リンゴ買い過ぎちゃったから渋谷君達にあげようかな・・・」
渋谷君達の事を考えながら僕は病室の扉を開いた
「秋人君」
部屋の中に入り、ベッドの上で眠る秋人君に話し掛ける
「僕ね、ちゃんと自分の思ってる事言えるようになったよ。
少しずつだけど人の目を見て話せるようになったよ。」
「・・・・・」
返事は無いけど、僕は笑い掛けながらそう言った
友達と話す事も嬉しいし楽しいけど
やっぱり僕は一番君と話がしたい
「泣き虫で弱虫なんてもう言わせないよ。
僕もちゃんと強くなるからね。」
秋人君の手を握って少し顔を近付けた
暖かい体温と秋人君の大きな手
優しくて落ち着く秋人君のにおい
「・・・僕、いっぱい伝えたい事あるんだ」
言いたいよ
今度こそ本当の気持ちを
秋人君が目を覚ましたらちゃんと言うからね
「だから、早く起きてね」
また笑い掛けて秋人君の手を離そうとした瞬間だった
「わっ!」
握った手を握り返され、そのまま腕を引かれて
「・・・へ・・・」
僕はベッドの上に倒れ込んだ
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