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AとM
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「……拾い物じゃないならなに?」
「…………」
「……」
新は黙ったまんまだった。何かを言いたそうな顔をしてるのに目が合うと下を向く
確かにプレゼントにしては見た目ボロボロだけど、俺は貰えた事が嬉しいのになんでそんな申し訳なさそうな顔してんだ?
「……ん?」
新は黙ったままだし、さてどうするかと思いもう一度ネックレスに目をやった。そして二つのリングの裏に彫られたイニシャルを見ると頭にハテナが浮かんだ
「……百歩譲ってこれは俺へのプレゼントだよな?」
「…………おう……」
「………」
そう言うと更に新は落ち込みを見せる。
リングの裏に彫られたイニシャルを何度確認しても、どう考えても間違ってる。俺とお前の頭文字を取ったなら……AとNのはずだ。
なんでMなのかと不思議に思ったが、思い当たる名前に辿り着くと『あ』と声を零してしまった。
「……なるほどね。だからMか」
「………」
謎のMが何なのか分かると気が抜けた。
「わっ!」
頭を強く撫でると、新は顔を上げて『怒ってねえか?』と言ってきた
「なんで?別に怒ってないよ」
「っ…だって……ちゃんとしたイニシャルじゃない」
「AとMの方が俺達らしくていいんじゃねえの?」
「……でも……でも、さ…」
少し頬を膨らませ、下を向いて拗ねてる……
あげた本人が拗ねてどうすんだよ。
「まさか、普通に間違ったとかじゃないよな?」
「……違う……間違えてない」
「じゃあなんでこのイニシャルにしたんだよ」
「…………」
俺の事『眼鏡』って呼んでるからだろ?本名彫るの恥ずかしがったんだろ……なんて、そんな推測をしてまた新の頭を撫でた時だった
「て、店員さんに……お前の名前言ったら…彼女さん可愛い名前ですねって……言われたんだ」
「え?」
「…彼女じゃねえって言いたかったけど……言えなくて……」
俺が新の彼女…………?彼女………
「ぶふっ……」
「あっ‼︎てめ、何笑ってんだよ‼︎」
彼女という単語を聞いた数秒後に笑いが襲ってきた。
吹き出した俺を見て新が顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。
けど……俺が彼女って……逆だろ…(笑)
「…ククッ……いや……んで?なんでそのままにしなかったんだよ……(笑)」
「な、なんかムカついたんだよ‼︎彼女だと思われてるイニシャルなんか彫りたくなかったんだ‼︎」
「へ、へぇ…それでMにしたのかよ?……(笑)」
「悪いかよっ‼︎気に入らねえなら返せ‼︎」
「おっと……」
いきなりネックレスを奪い取ろうとされ、俺は一歩後ろに下がった。
ネックレスを高く上げると必死に飛び跳ねてネックレスを取ろうとしてくる
「くそ眼鏡‼︎返せよ‼︎」
「だめだ。これはもう俺のだ」
「っ……俺よりちょっと身長高いからって調子乗んな‼︎」
「ちょっとじゃねえだろ。」
笑って高く上げたネックレスをヒラヒラとなびかせ新を挑発すると、悔しそうに俺を睨んで来た
そして飛び跳ねるのを止めて新は拳に力を入れる
「くそが……今に見てろ……お前の身長なんかすぐに抜いてやる」
「はっ、楽しみだな。何年後……いや、来世になっても無理そうだけどな」
「〜〜〜ッ‼︎」
更にヒートアップする新の顔……やっぱりお前と居ると飽きない。
俺の一言で色んな表情を見せるお前は本当に面白い。
「ほら、帰るぞ」
「…………」
「……新?」
「………ふん…」
顔を覗き込んで名前を呼ぶと、怒った顔はすぐに俺の事を好きだと言ってる顔に戻る
「……可愛い」
「は?」
「なんでもない」
「ちょっ……」
呟いた言葉を誤魔化し、手を繋いで病院を出る。
繋いだ手を握り返されまた胸が疼く。
振り返り顔を見てみると、新と目が合ってすぐ逸らされる。
けど、顔を見なくたってお前が俺の事を見ているのは分かる
こうやって、お前は俺だけを見てればいい。
「眼鏡……腹減った」
「飯でも食べに行くか?」
「……おう」
お腹が空いたと言った新を連れて街に向かう
また一つお前との思い出が出来たな。
「………」
…………あとは樹か
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