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モヤモヤ
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「趣味?趣味かぁ〜……うーん……」
顎の下に手を添えて秋人君は空を見上げた。
無難な質問しか思い浮かばなくてそう聞いたんだけど、無難過ぎて答えにくいかな?……趣味も料理って言うのかな?……
確かに趣味は何ですかって聞かれたら僕も少し考えてしまう。
簡単な質問だけど変に考え込んじゃう……
「りょ、料理とか?」
「お?……まぁ、料理するのは好きだけど……」
「?」
また秋人君はう〜んと考え始めた。
他に何かあるのかな……
秋人君の事だから他にあるとしたら…………
「……喧嘩」
「え……」
思った事がつい口に出てしまった。
咄嗟に口を閉じそっと秋人君を見上げると、何で分かった?って言ってる様な顔をしてる
でも……趣味って、いわば自分の好きな事だし……喧嘩の話をしてる時の秋人君はどんな時よりイキイキしてる……
文化祭の日、あの日僕を連れ去った不良達と喧嘩をしてる時の秋人君も楽しそうだった……
趣味って人それぞれだし……否定なんて出来ないけど、もし本当に趣味が喧嘩ならどうか別の事へ関心を向けてほしいな……
「……まぁ、前までは喧嘩が趣味だったな」
「え?」
ボソっと呟いた秋人君は急に僕の手を握ってきた
「ま、まま前までってっ……」
僕の手をじっと眺めながらにぎにぎされ、くすぐったい様な恥ずかしい様な変な気持ちになる
「やっぱ忍の手ってちっちぇよな」
「?」
ちっちぇ?……確かに秋人君の手に比べたら小さいけど………それがどうかしたのかな……
「俺さ、すっげえ喧嘩好きだったんだよ。暇さえあれば誰かと殴り合いしてた。勝ったらめちゃくちゃ気分良かったし。だから趣味は何?って聞かれたら前までは喧嘩って即答してた」
「………」
また秋人君は『前まで』と言った
じゃあ……今はなんなんだろう
「今は忍の事考えるのが趣味かな〜」
「へ⁉︎」
「って俺変態みたいじゃん。ははっ」
ははっ じゃないよ‼︎何にまにましながらそんな事言ってくれちゃってんの⁉︎
「〜〜〜ッ」
相変わらず手をぎゅぅーと握られてる…
言われた事も嬉しすぎてというか……恥ずかしくて顔が熱くなる
落ち着け…落ち着け僕……
「あと新をからかうのも好きだな‼︎これも趣味だ‼︎」
「しぃぶや君?」
「??」
「っ‼︎」
声が裏返ってしまった。おまけに訛りっぽくなっちゃった……
「お、おう。さっきもさ、見舞いには千羽鶴持って来るのが普通だぞ〜って言ってやったらあいつまじな顔して俺に任せろって言ってきたんだぜ?今頃家で鶴折ってるかもしれねえな」
「そ…それちょっと渋谷君が可哀想だよ」
「いいのいいの、あいつの人を疑わねえとこ俺好きなんだよ」
「……………」
秋人君の口から出た言葉が胸に刺さった……秋人君は楽しそうに渋谷君の話を続けている。だけどそこからの話は作り笑いで返していたかもしれない………
僕は人を疑う事しかしてない。渋谷君と真逆な自分を秋人君はどうして好きになったんだろう
胸がモヤモヤしてくる……そもそも、どうして僕を好きになったんだろう…僕の一体何が良くて……
「こら、そんな顔しねぇの」
「ふあっ」
肩を落としていると秋人君に頬を摘まれた
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