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泡沫の夢
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酷く疲れた日はいつもより早くに眠りについて、目が覚めると身支度を済ませ学校に行く。まだ誰も登校してない学校はとても静かで、朝を知らせる鳥の囀りのみが耳に入る。
教員室に寄り生徒会室の鍵を持っていつものように上の階に上がる。
机の上に山積みになった資料に目を通す。
「失礼します!」
そんな時、元気な声で生徒会室の扉を叩き中に入って来るのは僕の大好きな人
「おはよう。新」
「会長!おはようございます!」
僕と同じように朝早くに登校し、そして生徒会室に足を運んでくれる。僕を見て嬉しそうに笑って駆け寄って来る
「今日はいつにも増して仕事多いですね」
「そうだね。でも放課後までには終わらせるよ」
「放課後?でもこの量は……」
山積みの資料を見て、新は少し険しい顔をする
「ふふっ……大丈夫だよ」
そんな新の手を取って立ち上がり優しく抱き締める
小さな体は簡単に僕の腕の中に収まって、新は抱き締めるだけで顔を真っ赤に染める
「か、会長っ!」
「新………」
戸惑う新をまた抱き締め直す
冬の朝の冷え込みなんてあっという間に消え去って、互いの体温が互いの体を温めていく
「放課後……一緒に帰ろうね」
「へっ⁉︎」
「今日はどこか寄り道でもして行こう」
「………は、はい」
新の手が僕の背中に回って、放課後一緒に帰る約束をする
「好きだよ……」
「……っ…お、俺も……好きです……」
当たり前のように気持ちを伝え合って、当たり前のように抱き合いキスをする
キスをした後は、新は必ず微笑み、また僕に向かって『好き』と言ってくれる……僕も微笑み返して好きだと伝え、もう一度抱き締め合う。こうして僕と新の一日が始まる。
幸せだった。何気ないそんな日々がどんな物にも代え難く何よりも大切で、愛しくて………
何を引き換えにしてもいいから……僕はずっと新の傍に居たかった
『やめて、下さいっ……‼︎や、嫌だっ‼︎』
新の泣く声が聞こえる……
僕に必死に手を伸ばして誰かを呼んでる
「新…⁇……」
だけどどんなに手を伸ばしても僕の手は新には届かない
『い、たいっ…やだ……やめ、て下さ……』
だんだんと、新の声がはっきりしてくる
苦しそうに泣き叫ぶ新に声を掛けるが、声すら新には届かなかった
『やめ……っ、て…くださ……会長っ』
「新‼︎」
ようやく声が届いたのか新は僕に顔を向けた……でも、その顔は僕が大好きな新の表情じゃなかった
『…ヒックっ、……助け、て…………』
「新……?」
『……成海……』
「っ‼︎」
新が成海を呼んだところで僕は目を覚ました
「……はぁ……っ、はぁ……」
額からの汗が酷く、息が上がっている
「………夢……」
ベッドに横になったまま、僕はうっかり眠ってしまっていた。体を起こそうとしたがどうも怠くてそれが出来ない
「………はぁ」
腕で目を覆い、大きく息を吐いた
………なんて夢を見てしまったんだろう。新と僕が思い合う心地の良い夢……僕は夢でまで新に期待をしてしまった。新と当たり前の毎日を送ってる日々……とても幸せだと感じてしまった……
そして、もう一つの夢………僕が新を犯している最悪な夢……でもそれは夢なんかじゃなくて本当にあった事であって……
「……ふふ…」
また、自己嫌悪が襲ってくる
「僕じゃなかった……」
新が必死に手を伸ばして、名前を呼んでいたのは僕じゃなかった………
「……ごめんね……新……」
体を押さえつけて、嫌がる新に無理やり体を重ねて……傷付けていたのは自分……
そして新が何度も助けを求めて呼んでいたのは……
……………成海だった
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