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同じ生い立ち
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新との事を聞こうと思って、樹の家まで来てしまった。
あいつと連絡なんて滅多に取らねえし、連絡したとしても返事が返ってくるかさえ危うい。だから家に行く事にした。
顔を見るとすぐに新の事を聞こうと思っていたのに、樹は俺の顔を見るなり顔を真っ青にして床に倒れた。
休みに入って一度も会ってないからそれなりにお互い何かの変化はあると思っていたけど、久しぶりに樹を見て感じたのは、樹は前よりも痩せたという事だった。
倒れた樹をこいつの部屋まで運んでベッドに寝かせた。
顔色は病人みたいに真っ青で、倒れて意識が無い中でずっとうなされてる。
「チッ……どんだけ仕事溜め込んでんだよ」
樹の部屋に上がってもう一つ思った事は、“こいつらしくない”だった。
樹は昔から完璧な奴で、任された仕事は期日までには必ず終わらせる。そんな奴なのに今のこいつの机の上には、どう見てもまだ目を通してない資料が山のように置かれている。
朝の生徒会室か。と言いたくなった。
「……うっ……」
「………」
相変わらず額に汗をかいて、苦しそうにうなされている。
樹の両親が帰ってくる気配は無く、樹の枕元で丸くなる白い猫が一匹居るくらいだった。
「はぁ……」
調子が狂う。
自己管理は怠らないこいつが、なんでこんな状態になってしまったのかは、きっと新が関係してくるだろう。新の事を聞くはずだったのにこれじゃ話も出来やしない。
椅子に腰を掛けて机の上に積まれる資料を手に取った。
これくらいなら、朝までには片がつくだろう……
そう思い、樹が目を覚ますまでこいつがやるはずだった資料に目を通し始める。
「………」
だが、資料に目を通して驚いた事があった。
俺達に任される仕事は大体が校内行事の進行・企画資料の作成や修正、月一で行われる外部に向けたうちの高校の評価アンケートの集計等。
雑用とも言える簡単な仕事だが、今のこいつの机に置かれた資料は、高校生が理解出来る内容とは思えない。俺は出来るけど。
まぁ理事長から頼まれた仕事なんだろう……
俺と樹は生い立ちが似ている分、こいつの今の状況がよく分かる。
私情で何かが起きて精神が不安定になってたとしても、親は何も気づいてはくれない。それどころか自分の子供に相当な期待をし、圧力だけを掛けてくる。
樹の母親は医者だ。俺が一目見てもすぐ気付く程、樹は体調が悪かったのに何も気付いてやらなかったのか?
「ゔっ………っ…」
「………」
あと、やっぱり樹は新と少し似ている。
「……馬鹿が」
全部一人で抱えて、体調に影響が出る程自分を責めて……
共通して二人が辿り着く答えは『俺から離れようとする事』
おそらく樹は、俺と縁を切るつもりなんだろうけどそんな事はさせない。
リビングに行って薬を手に取り、コップに水を注いだ。そして樹の部屋へと戻る。
枕元に手をやり樹を見下ろすと、白い猫がベッドから飛び降りた。
こんなことは新以外にはしたくないが、この際仕方ない。
「目ぇ覚ましたら覚悟しろよ……樹」
手に持った薬と水を口に含み、苦しそうに唸る樹の顔を掴んでこちらに向かせた。
「……っ……ン…」
口移しで薬を飲ませるとこれまた苦しそうに眉を歪める。
樹が薬を飲んだのを確認すると口を離し自分の口元を拭った。
まぁ、これで少しは体調も良くなるだろう……
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