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大嫌いだ
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倒れてしまったと自分の中で分かっていた。
まさかここまで無理をしていたなんて思ってもみなかった。
しかも…成海の目の前で倒れるなんて……最悪なタイミングだ……
倒れてしまった後も夢を見た。だけどその夢には何も映されては居なくて、ただ真っ暗な暗闇の中に僕が一人居るだけの何でもない夢だった。
きっと深い眠りだったんだと思う………何も考えなくていい夢だった。
目を覚ましたら……成海が居る……
昔は成海が倒れると僕が面倒を看ていた。仏頂面で目を覚ました成海に、僕が笑って話し掛けていた。
何年も昔の話だ。
今回は僕が倒れてしまった。……お前は、笑い掛けては来ないだろう
「……っ…」
倒れてどれくらい経った?……
まだ重い瞼を開くと思った通り僕はベッドに運ばれていた。だけど目を覚ますと、瞼こそまだ重いが、体の怠さは少しマシになっていた。
「………成海?」
上半身を起こして部屋の隅にある僕の机に目をやると、机に伏せて眠っている成海の姿が目に入った。
完全に体を起こして成海の方に近付くと、机の上の資料が綺麗に片付けられていた。
「これは………」
父さんに頼まれていた書類も全て正確に必要事項が記入されていて、正直驚いた。
時計を見ると朝の5時を回っている。たった6時間程度でこの量を終わらせるなんて……
机には薬箱と、水が少量入ったコップが置かれていて、成海が僕に飲ませてくれた物だとすぐ分かった……
放っておけば良かったのに……書類まで片をつけてくれた挙句、薬まで飲ませるなんて……
僕はお前の大切な人を汚したのに……昔からそうだ。お前はどこか僕に甘い。
「……風邪引くよ……成海…」
机に伏せる成海に毛布を掛けてやった。
成海が誰よりも優しい事は知っている。知っているからこそ、僕はお前が大嫌いだ
見捨てて欲しい時に絶対引き止めようとしてくる……来るものを拒んで去る者を追う……どこまでも僕と似た考え……
もしお互い別の人を好きになっていたら、今頃お前と好きな人の事を語り合えたかもしれない……
同じ人を好きにならなければ、きっとお前に嫉妬する事も、劣等感を抱く事も、お前を嫌いだと思う事も無かったのに………
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