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お前だけじゃない
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「……それ本気で言ってるのか?」
「…………」
成海が椅子から立ち上がって僕の方へと近付いて来る。
「本気だよ。恋愛なんてくだらない……もっと早くに切り捨てるべきだった」
「………」
叶いもしないものを望んで、この先どうなるって言うんだ……学んだ事は沢山あった。だけど知ったものはこの先どう生かして行けばいいんだ?
きっと………僕は新以外好きにはなれない。
「文化祭の次の日……お前、俺に言ったよな?」
「……?」
文化祭の……次の日……
「本音から言ってんのか?」
「⁉︎」
成海はそう言うと、僕の胸倉を掴んできた
「らしくねぇぞ樹……お前は他人から言われねえと気付けねえ奴だったかよ?」
「……」
「お前が何考えてるかなんて分かってんだよ。自分さえ居なければあいつは幸せになれるとか思ってんだろ」
「…………っ…」
図星を突かれ下を向いてしまう。
文化祭の次の日、成海の元へ行って……自分が言った言葉を思い出した
あの時は今と全くの逆の状況だった。新から離れて行こうとした成海を僕が引き止めた……
でもそれは……新の心がお前に向けられていたから………
「……あの時とは違う」
「は?」
あの時は、僕が新の傍に居ても何もしてやれなかったから……
新の事を幸せに出来るのは僕じゃなかったから……
それでも好きな人の為に何かしたくて……少しでも新に笑っててほしくて……必死だっただけなんだ
泣くところなんて見たくなくて……ただずっと笑っていてほしかったから
「お前が羨ましいよ……成海」
僕が必死になって繋ぎ止めた新の笑顔を、お前は簡単に引き出す事が出来る
「これ以上僕を惨めにさせないでくれ……お前が新と一緒に居る所を見るだけでどうにかなりそうなんだ……もう新の望む僕では居られない。これ以上嘘を吐いてまで、お前と新に幸せになって欲しいなんて言えないし思えない……」
新に幸せになって欲しいのは山々だ……でもそれがお前とだと考えると、酷く劣等感に襲われる…
どうして僕じゃなくてお前なんだ……
「………」
駄目だ………またこの感じ……胸がズキズキと痛んで張り裂けそうになる感覚
ぎゅっと胸を握り締めた時だった
「そう思ってるのはお前だけじゃねえよ」
「………?」
成海は僕から手を離し、酷く辛そうな顔をした
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