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望み
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樹が言ってる事はよく分かる。今のお前は少し前の俺そのものだ。
「俺だって、もしお前と新が付き合ってたら……幸せになってほしいなんて死んでも思えないだろうな」
口では何とでも言える。表向きは明るく振る舞えたとしても、裏では好きな奴が選んだ相手を妬んで恨んで、感情が抑え付けれなくなったところで暴走してしまう。
「俺とお前の立場が逆なら、俺はお前よりもっと早くにあいつを犯してたよ」
「………」
新は喧嘩は強いけど、体格も身長も俺達より遥かに小さい。その気になれば、あいつの体の動きを封じる事なんて簡単に出来る……
あいつに出会った時からそれは分かってた事だ。
だから俺は、あいつに拒絶される度に、あいつを抑えつけて動けなくして、何度もあいつに酷い事をして来た
けど、新の事が好きだって気付いてからは……そんな事出来なくなった。
大切にしたくて、傷付けたくなくて……それでも俺はあいつを何度も傷付けて来た。
樹の方がきっとあいつを幸せに出来ると思って身を引こうとしたけど、好きな奴が自分じゃない誰かと幸せになるなんて……考えるだけでおかしくなりそうだった。
あいつが俺に好きだって言ってくれた時、気付いた事がある……
「誰と居て、何をして幸せなんてあいつが決める事だ。『なってほしい』なんて他人の願望は要らねえんだよ。一緒に居て苦痛だと感じるなら、あいつが自分から離れて行くだろ。あいつが離れて行かなかったって事は、俺達を大事に思ってくれてるって事じゃねえのかよ。」
「………」
「樹……お前はあいつとどうなりてぇんだ?お前が望んでる事はなんだ?」
「………」
「新を幸せにしてやりたいんじゃねえのかよ」
「…………」
樹は下を向いたままだった
「俺は俺のやり方であいつを幸せにする。この先あいつが別の誰かを好きになったとしても、俺はあいつを幸せにする。これ以上お前を責めるつもりはない。俺はお前以上にあいつを泣かして傷付けて来た。だけどもう絶対傷付けたりしない。」
「………」
「好きなら好きで別にいいじゃねえかよ。押し殺したところで消えて無くなるもんじゃねえだろ。俺も生半可な覚悟であいつと一緒に居るんじゃねえんだ。欲しいなら堂々と奪いに来い。」
「……それは新に選ばれたお前だから言える事だ。随分と余裕だね……」
ようやく樹が俺の方を向いて、少しだけ笑った
余裕……か
確かにこんな事言ってると俺は本当に嫌な奴なのかもしれない。自分の今の立場をお前に見せつけてるのかもしれない。
「……新の笑った顔……好きなんだ」
「……?」
「許して欲しいなんて思ってない……でも…もし、もう一度新の笑顔が見れるなら……僕は何だってする」
樹の声は震えていて、心臓のある位置を強く握り締めていた。
切なく笑ってる……とでも言うのか?……そんな苦しそうな顔で樹は笑った。
「新と……もう一度話がしたい……謝って済む話ではないけど…許されなくてもいいから……ちゃんと謝罪したい」
「それがお前の望みか?」
「望み……そうだね……願ってもいい事ならあと一つ……もし許されるのなら……」
「……?」
「新の傍に居たい……」
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