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安堵
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「……どんな形でもいい……側に居たい」
望んでもいい事なら、僕はそれしかない。
ずっとそう思ってたけど、僕はそれを破ってしまった。『先輩』という形では結局物足りなかった。でも脱線してしまった後は……どれくらい戻りたいと願った事だろう……
「なら、早くあいつに会って来い」
「………」
外してしまったものを、まさか成海が戻そうとしてくれるなんて……
「僕と新を会わせてもいいの?」
「安心しろ。その場には俺も居る。」
「………そうか」
成海は……変わった……
「なら安心だ……」
ほんの少し前までは、僕にさえ感情をあまり見せなかったのに。こうやってお前と二人でちゃんと話しをした事なんて、思い返してみれば無かった事かもしれない。
「お前、新に会うならまず体どうにかしろ」
「…え?」
突然、成海は僕の胸に人差し指を当て、仏頂面でそう言われた
「顔色と……後、飯食ってんのか?ガリガリじゃねえかよ。気色悪い。」
「………あ……うん」
そう言えば……最近ほとんど何も食べてない…
「今のお前見たら、あいつが変な心配するだろが。ちゃんと『元のお前』になってから会えよ。」
「………」
「殴らないのか?って……お前聞いたよな?」
「?」
成海は僕から離れて部屋の入り口へと向かった。
扉を開き、出て行こうとした瞬間、またこちらを向いて成海は笑った
「今は殴らねえよ。」
「………」
成海は、こんな顔で笑う奴だったかな……?
「あと樹、新はお前を許してくれると思うぜ。」
「え……」
「でも、俺はお前を許さないから。」
そう言い残した後、成海は部屋を出て行ってしまった。
だけど、扉が閉まり切る前に、もう一つ成海は何かを言って行った。
その言葉は小さい声だったけど確かに僕には聞こえた。
『お前も俺を許さなくていい』
「……本当に敵わないな」
椅子に腰を掛け、成海が片付けてくれた資料を手に取った。
「元の僕……」
変わらなくちゃいけないと思ってた。
でも……変わらなくていいのか……
少し心に安堵が生まれた時、部屋の隅からリリィが出て来て僕の足に擦り寄って来た。
頭を撫でてやると喉を鳴らす……
そう言えば、リリィにご飯あげる途中だったな……
「ふふっ……一緒に下に行こうか。僕もお腹空いたんだ。」
新に会うために
元の僕に戻らないと……
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