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安心と不安
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朝、6時半に目が覚めて久しぶりに制服に着替えた。
年が明けるまでの数日間、随分長く感じた。
去年は色々あったな…
秋人は明日退院すると言ってた。
傷の治りも順調らしく、秋人は早く退院したいって何度も俺に電話を掛けて来た。
大崎とも上手くいってるみたいで安心した
俺も……眼鏡と色々あったけど、何とか上手くいってると…思う。
そして、年が明け今日からまた学校が始まる。
気が乗らないまま玄関へと向かい、誰も居ない家に「行ってきます」と言って家を出た。
「…っ…さっむ…」
相変わらずの冷え込みに身体がぶるっと震え、口元に手をやってはぁーと息を吐いた。
吐いた白い息が空気中に溶け込んで、まだ薄暗い空を見上げる。
「学校……か」
始業式……生徒会は早くに登校してその準備を手伝わないといけない。
集合時間は8時なんだけど、俺はそれよりも早く学校に行く。
昨日、眼鏡から連絡があった。
内容は会長との事で、始業式の前に会長が俺に会いたいって言ってるとメールで言われた。
本当は学校が始まる前に会長と話しする予定だったけど、会長は色々と忙しかったみたいで……
結局話し合うのは今日になってしまった。
「……嫌、だな」
会長に会いたくないなんて、今まで思った事無かったのに。
「新」
「⁉︎」
家の前で立ちすくんでいたら、左側から名前を呼ばれた
「おはよ」
声のする方へと顔を向けると、そこには眼鏡が立っていた
「お、おっす…」
とりあえず挨拶はした。挨拶はした。
でもすぐ目を逸らしてしまう
「大丈夫か?行ける?」
「……行ける」
近寄って来て、さっそく手を握られる。
顔覗き込まれて心臓がドキドキしてくる。
あったかい…こいつの手は本当にあったかい
さっきまでの不安が安心に変わっていく感じがする
「樹には言ってるから。俺も一緒だって」
「別に…俺一人でも大丈夫だ」
会長と話す時、こいつもその場に居るらしいけど
正直俺は居て欲しくない
「ちょっと離れた場所から見てるだけだって。別に口出ししたりしねえから」
「………」
見てるだけ……それでも俺は嫌なんだ
全然心の準備出来てねえのに会長と会って、取り乱す俺をお前に見て欲しくないんだ
「にしても寒いな。お前ちゃんと着込んで来てる?」
「ヒートテック着てる…」
「なら大丈夫だな。」
そう言って眼鏡は俺の手を引いて歩き出す。
マフラーで顔をすっぽりと隠しながら重い足を進めた。
「………」
眼鏡と手を繋いでる…胸がほんわかする
……好きな奴と二人で学校に登校してる
「眼鏡………」
「なに?」
声を掛けると、眼鏡は立ち止まって振り向いた
こいつの顔を見るだけで安心出来る日が来るなんて思ってもみなかった。
むしろ俺の中ではこうして手を繋いで登校してるとしたらそれは会長とだ。って…初めの頃は思ってた。
結果付き合ったのはこいつだけど、恋愛の好きじゃなくても俺は会長の事が大好きだった
「な、なんでも、ねぇ」
でも会長との間には深い溝が出来てしまった
「ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だ…」
ぎゅっと眼鏡の手を握りしめる。
また胸がほんわかした……でも少しザワザワと不安が残る
今日、学校から家に帰り着く頃には
前みたいに会長の事……
大好きだって思えるようになるのかな
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