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最後の年
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会長の腕の中はめちゃくちゃあったかくて気持ち良かった。
陽だまりに包まれているようで心の底から安心出来た。
本当は、こうして会うのが怖くて堪らなかったけど、生徒会室に入って会長の顔を見た瞬間思わず抱き付いてしまった。
前みたいに笑い掛けてくれたから安心したのかもしれない。
何がそうさせたのか分からねえけど、抱き付いてしまった。
ずっと会いたかった俺の中の会長にやっと会えた気がして涙が止まらなくて、「ごめん」って何度も謝ってきた会長は少しだけ泣いてた気がした。
俺を抱き締める会長の腕は眼鏡と良く似てた。
大事そうに抱き締められてまた涙が溢れた。
「…僕も……大好きだよ……」
大好きだと伝えると会長もそう返してくれた。
文化祭明けの学校で、会長とここで話しをした時を思い出した……
あの時、会長は俺に「大好きだった」って言った。
過去形にする事で俺への負担を無くす様にしてくれてたんだと思う。
俺が眼鏡のとこに行けるように、気遣ってそう言ってくれたんだと思う。
「……ありがとう…」
頬に触れる会長の手は少しだけ震えてる。
見上げると優しい笑顔の会長が俺を見下ろしてる。
「…言わせてくれて……ありがとう」
「……っ」
会長が目を閉じて微笑んだ瞬間、その綺麗な瞳から涙が零れ落ちた。
初めて会長が泣いたところを見て、ありがとうと言われて俺まで涙が溢れた。
「成海が嫌になったら……いつでも僕のとこにおいで」
「……へへ……なんですかそれ…」
会長はそう言ったけど、本気でそう言ってるとは思えなかった。
成海と仲良くね。って言ってる様に聞こえた……
「おい。もういいだろ」
会長と顔を合わせて笑い合ってたら、背中を引っ張られて後ろに引き寄せられる。
くっ付いてたあったかい会長の体温が離れて、今度は背中に良く知る眼鏡の体温が感じられた。
「俺が嫌になったら何だって?」
「僕のとこにおいでって言ったんだ」
「へぇ。余裕出てきたじゃねえかよ。大人しくしててやったけどもうちょい早く中に入って来たら良かったな。」
「一生入って来なくても僕は良かったんだけどね」
俺を挟んで言い合いを始めた……
まぁ、前みたいな感じに二人が戻ってる気はするけど……
何か嬉しい……
「何笑ってんの」
「はひゃっ‼︎」
にやにやしてたら眼鏡に両頬を引っ張られた。
もちろんムカついたから俺だって眼鏡の頬っぺ引っ張ってやった
「てへっははへほ!(てめ、離せよ‼︎」
「ひははへ(嫌だね)」
会長といい感じに和解してたのにこいつのせいで台無しだ
ビョーンビョーンと頬っぺ引っ張られて痛い
会長はそんな俺と眼鏡を見て微笑んでた
………くそ…本当に会長は天使に見える。
「お前、樹に大好きって言われた時鼻の下伸びてたぞ」
「っは?伸びてねえ‼︎」
「お前も樹の事が大好きなんだよな?…へえ〜」
「っ‼︎」
それに比べてこいつは何だ⁉︎やっぱり悪魔だ‼︎
その大好きはそう言う意味じゃねえのに‼︎
眼鏡に向かって一発殴ってやろうと拳を振り上げた瞬間、生徒会を呼び出すアナウンスが校内に流れた。
「二人とも、呼ばれてるからそろそろ行こう。」
眼鏡と掴み合いをする隣で会長がにこにこ笑顔でそう言ってくる。
「チッ、くそ眼鏡が」
眼鏡の手をパシッとはたき落し、会長へと体を向ける。
「新、今年もよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
色んな事があったけど、こうしてまた笑い合える日が来た。
眼鏡とも、会長とも、本当に沢山色んな事があった。
「ほら行くぞ」
「ま、待てよ‼︎」
急に手を引かれて体がよろけた。
態勢を立て直して眼鏡の後に付いて歩き、その後ろを会長がついてくる。
今年、俺は2年になって眼鏡達は3年生になる。
大好きな人達と過ごせる、最後の年が始まる
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