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彼
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新学期が始まると校内は実に賑やかだった。
オリエンテーションを明日に控え、休み時間になる度に廊下には一年生が集結していた。
新しい出会いを彼等は楽しんでいるのだろう。
一年生とすれ違う時に、「廊下では静かにね?」と一言注意をしているが、コミュニケーションの場になるなら学校に慣れるまではそのままにしておいてもいいかもしれない。
昼休みに入り、生徒会室へ向かおうと教室を出ると、向かいから物凄く怖い形相をした舞園が歩いて来た。
「会長‼︎」
「えっ」
目の前に来ると、ネクタイをぐんっと引っ張られて顔を近づけられる。
鼻先が当たってしまいそうな程で、周りから見たら下手をするとキスをしていると取られてしまうかもしれない。
「ど、どうしたの?」
まぁ、こんな殺気立ったキスなんてあるわけないけど……
「どうしたもこうしたも無いですよ‼︎どうなってるんですか一体‼︎」
怒鳴り声がキンっと耳に響いた。
至近距離だから鼓膜破れるかと思ったよ……
ポイっとネクタイを荒く離され、直ぐに身なりを正した。
舞園はぷんすかと怒っててなんで怒鳴られたのか全く分からなかった。
「舞園……え、と…」
何か怒らせる様な事しちゃったのかな?
でも、最近忙しかったから舞園には会ってなかったし……
「何で怒ってるか、話してくれない?」
「怒ってません。困ってるんです。」
舞園は一度僕を見た後、周りをキョロキョロと見渡しながら腕を組んで頬を膨らませた。
困ってる。と言われ更に何が何だか分からなくなる。
「会長、彼と最近会ってますか?」
「彼?」
「日野さんです」
「え……」
舞園の口から日野の名前が出た瞬間、どきりとした。
すぐに会ってないと答えると舞園は大きなため息を吐いた。
「もぅ……彼のお世話係は生徒会の役目でしょう?」
酷く呆れたようにそう言われてしまったが、やはり話しが全く見えない。
日野の事は僕も少し気にはなっていたが、日野を嫌っていた舞園が何故僕にこんな話しをして来たのかと不思議に思っていると、廊下の向かい側から舞園を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「ぶちょーーさぁーーん‼︎どこっすかぁー?」
「⁉︎」
その声が廊下に響くと、舞園はビクっとして僕の背中に隠れた。
「ちょ……舞園っ」
「動かないで下さい会長っ‼︎」
ぎゅっと背中にしがみ付かれ、華奢な体はすっぽりと僕の背中に隠れてしまった。
舞園を呼ぶ声は次第に近付いて来てる。
「呼ばれてるよ?行かなくていいの?」
「いいんです‼︎わたしは彼に会いたくないんです‼︎」
彼?
舞園がそう言った瞬間、視線を声のする方へと向けると、声を発してる者と目が合った。
「…………日野」
「いっちゃん?……」
始業式以来、顔も合わせてなかった日野が、僕を見て少し驚いた顔をしている。
日野は僕の後ろに隠れていた舞園に気付いていたが、舞園に声を掛ける事も無くそのまま背を向けて去って行った。
舞園を探していたのに、僕を見てそれを辞めた様にも見えた。
「ふぅ……諦めてくれれば良いのに…」
後ろから舞園が小声でそう呟く。
「……?」
本当に、何がどうなっているのか全く分からない。
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