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イライラ
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少し開いた扉から差し込む光は、暗い空き教室を照らすのには不十分だった。
僕に覆い被さる人物は暗くて見えない。
だが、聞こえて来た声、がっしりとした体格。
一度交えた肌の熱が背中に触れ、この人物が誰なのかすぐに分かった。
「ふぅ……よし。あの一年生居らんなったな」
「…………」
訛りが混ざる言葉使い。
水田君の声が遠くなると、口と目を塞いでいた彼の手が離れた。
「いやぁ〜なんかこういうのドキドキするなあ」
「……するわけないでしょ」
陽気な声で笑う彼の方へと振り向くと、薄暗くて顔は良く見えないが、そこに居たのは確かに日野だった。
ギロリと睨むと、日野は慌ててごめんと謝って来た。
「それは何に対して謝ってるの?オリエンテーションをサボってこんな所に居た事に対して?それともいきなり僕を拉致する様な真似をした事に対して?」
「え……や〜…」
日野はいつもと変わらない様子だった。
ははは、と笑って僕からの質問を誤魔化す。
顔を見せなくなったかと思えば、いきなり何なんだ。
昨日は僕を見て逃げたくせに、何でこんな事をしたんだと思っていると、急に日野は両手をパチンっと合わせ頭を下げてきた。
「お願いやいっちゃん‼︎部長さんに俺の勉強見てもらえるように、いっちゃんから頼んでほしい‼︎」
「………は?」
「俺、頭良くなりたい。何回も頼んでみたがやけんど、俺、部長さんに嫌われちゅうみたいやき……いっちゃんは部長さんと仲良いやろ?やきいっちゃんからのお願いやったら部長さん引き受けてくれると思うて……」
「…………」
また胸がモヤっとする。
日野はその後も深く頭を下げて「どうかお願いします」と言ってきた。
いきなり何を言い出したのかと思えば、舞園が言っていた勉強の話。
必死に頭を下げる日野を見ると、更に胸のモヤモヤは増した。
「はぁ……勉強なら僕が見てあげるよ。」
「いかん‼︎俺は部長さんにお願いしたいが‼︎」
「………」
大きな声でそう返され、今度はイラっとした。
僕が見てあげると言えば、大袈裟に喜んで騒ぐと思っていたのに、日野は僕の親切を盛大に踏み躙った。
「何で舞園なの?君の世話役は僕達生徒会の役目なんだよ?彼女である必要はないでしょ。僕が見てあげるよ。」
「いや、俺は部長さんがえいが‼︎」
「なんで?」
「部長さん可愛いもん‼︎」
「…………」
キラキラした明るい声ではっきりと言い切った日野はどこか満足気だった。
その後も舞園の良いところを口に出して、とても楽しそうに彼女の事を僕に話して来た。
「ほんとは部長さんともっと話ししたいがやけんど、中々会ってくれんくて……可愛い子に避けられるって結構キツイなぁ」
「………」
ああ……本当にイライラする。
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