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気味が悪い
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「日野、同じ所間違えてるよ。」
「え…まじで?…あ〜、よし分かった。もっかい解く。」
「うん。分からなかったら聞いて。」
何枚にも重なった問題集に、一枚の答案用紙。
問題集の重要な箇所には青いペンでチェックをし、答案用紙には赤い丸やペケが沢山付いてる。
日野の答案用紙はペケの方が圧倒的に多い。
彼は生徒会室に来て、思いの外真面目に勉強を受けてくれている。
気味が悪いと思える程だ。
僕が渡した問題集を黙々と解いている。
日野と言葉を交わすのは問題を解き終わった時と、分からない所を僕に聞きく時くらいだ。
いや、勉強会だから、無駄な私語が無いのは良い事だ。むしろこれが普通だ。
だけどいつもとは打って変わった日野の真剣な表情と態度。
真面目なその姿勢に、少し関心を覚える。
「日野、なんで急に勉強したくなったの?」
机に片肘を掛け、手の甲を頬に添え、一心不乱に問題を解く彼を見てボソリと呟く。
聞こえなかったのか、日野は返事をしなかった。
時間は刻々と過ぎ去り、あっという間に2時間が経った。
この2時間の間、日野は一言も私語をする事なく、一度も僕と目を合わせる事無く勉強を終えた。
「うぁぁ…頭ん中ぐちゃぐちゃやわ…」
パイプ椅子の背もたれが日野の大きな背中を支え、ギシ、と軋んだ。
用意しておいたペットボトルのお茶を差し出すと、彼はそれを受け取り一気にお茶を飲み干してしまった。
「お疲れ様」
「お〜。いっちゃんありがとう。」
空になったペットボトルを受け取り、散らばった問題集を束ねる。
日野は疲れたのか、背もたれに体を預けたまま上を向いて目を瞑っていた。
外はもう真っ暗だ。下校時刻を少し過ぎてしまった。
「明日はどうする?」
明日、日野が大丈夫なら朝から勉強してもいい。
昼休みは脳を休める時間として、放課後また2時間程勉強をするとしたら3週間あれば十分に学力は上げる事が出来る。
朝は平気?と聞くと彼は頷いた。
「そうだ。これ授業内容をまとめたノート。去年のものだけどもし良かったら使って。」
鞄の中から去年の全教科後期分の授業内容をまとめたノートを3冊日野に差し出した。
ノートを渡し、退室する際の最終確認をする。
「なぁいっちゃん」
窓の鍵を確認し、電気を消そうとした瞬間、扉の方から日野の声が聞こえた。
「なに?忘れ物?」
「んー、やっぱなんもない。」
「?」
パチン、と電気を消すと同時に彼の方を見るとその時ようやく日野と目が合った気がした。
「んじゃ、明日もよろしくなぁ〜」
最後に別れの挨拶をする時はいつも通りの口調。
今日の彼は何か違和感があったけど、その時の一言を聞くと別に大した変化はなかったと思ってしまった。
違和感があったとしても、別に気にする事は無いけど。
少し大人しくしてくれていた方がこちらにとっては有難い。
「はぁ……」
明日の昼休みは少し新の顔を見に行こう。
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