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【番外編:少し遅れのホワイトデー編 秋人×忍】
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バレンタインから一ヶ月が経って、今日はホワイトデー。
一ヶ月前、僕は一生懸命作ったチョコを秋人君に渡した。
ほとんどお母さんが作ったけど……あれは僕の人生で初めての手作りチョコだった。
手渡しなんて恥ずかしかったけど、勇気を出して渡したんだ。
そして渡せた。渡せたところまでは良かった。
でもその後、秋人君は満面の笑みで、上着のポケットから可愛らしいラッピングが施された半透明のピンク色の袋を出してきた。
『忍、ハッピーバレンタイン!』
『…………』
そう!渡されたのは手作りチョコ‼︎‼︎
一ヶ月前、僕だけが渡すはずだったチョコを秋人君も用意してた!
しかも僕の作ったチョコなんかより全然綺麗で形も良くて何より美味しかった‼︎‼︎
おまけに可愛いらし過ぎるラッピングに心を打たれ、隠された秋人君の女子力というものを嫌と言うほど味わったよ‼︎‼︎
でも、バレンタインは好きな人にチョコを渡す日だから、そう考えると秋人君からチョコを貰えたのはすっごく嬉しいって思った。
「あ、忍ー!」
「っ‼︎」
後ろから秋人君が大きな声で僕を呼ぶ。
振り向いて手を振るとニコニコ笑顔の秋人君が僕の方へと走って来る。
私服の秋人君……かっこいい。
「ごめんな?電車遅延しちまって……」
「あ、大丈夫だよ。遅延は仕方ないよ。」
「へへっ、忍と一緒に乗ってたら別にどんだけ遅延してても良かったんだけどな!」
「……そ、そういう事言わないで」
「なんで?ま、行こうぜ。混むといけないしさ。」
さらりと恥ずかしい事を言い放った秋人君は、僕の手を取って歩き出した。
受け付けカウンターの前にできた列の最後尾に並んで、あらかじめ用意しておいたパンフレットを開く。
「やっぱ土曜日は混むなぁ〜。13時からのイルカショー見れたらいいな?」
「う、うん」
顔を覗き込まれてドキドキする。
もう一度言うけど、今日はバレンタインから一ヶ月経ったホワイトデー。
バレンタインではちゃんと手作りチョコを秋人君に渡せた。
でも、まさか秋人君からチョコを貰うなんて思ってなかったから…
今日のホワイトデーは……お互いがチョコのお返しをする。って事で水族館に来てるけど……
そう。いわばこれはデートだ。
秋人君とデート……デートしてるよ僕……
「ん?どした?」
「ひゃっ‼︎」
にやにやしてたら、また顔を覗き込まれて体が跳ねた。
なんでもないです。と言って再度パンフレットに目を通す。
ドキドキしてる。緊張してる。隣に秋人君が居る。
嬉しいなってまたにやにやしてたら、僕達の後ろに女性が四人並んだ。
周りをキョロキョロと見渡してる秋人君を見て、後ろから女性の方々が秋人君の事を話し始めた。
“前の人かっこよくない?”
“高校生かな?声掛ける?”
“でもデート中じゃないの?”
“隣に居る子男の子よ?”
「…………」
小声だけどはっきり聞こえる。
秋人君は聞こえてないのかもしれないけど、僕にははっきり聞こえた。
一緒に居る子が男の子なら、声掛けちゃいましょうよ。ってまた聞こえてきた。
「…っ……」
嫌だ。今日はせっかく二人きりなのに。
「あのぉすみませ「忍さ、昨日テレビ見た?」」
「えっ」
後ろから秋人君に話し掛けようとした女性の声は秋人君の声に掻き消された。
「テレビ?」
「ん。なんかさ、丁度テレビつけたらここの水族館の事放送しててさ。」
秋人君は後ろの女性に気付いてる。
気付いてるけど、気付かないふりしてる。
「んでな、俺その番組でクリオネって生き物がいるの初めて知ったんだよ。忍はクリオネって知ってるか?」
「え…と…」
普通に話しながら、秋人君は手を握って来た。
喋りながら、視線は前にやったまま僕の右手をぎゅぅっと握り締めて来る。
「く、クリオネ…し、知ってるよっ…す、凄く可愛いよ…‼︎でも、実際見た事は……て、テレビでしか」
僕も頑張って精一杯握り返すと、秋人君が僕の方を向いてにかりと笑った。
「んじゃ、クリオネぜってぇー見ような!」
「っ……‼︎」
向けられた笑顔がマブい。マブ過ぎるっ
「おっ、次俺達だ!」
やっと僕達の番が来て、受け付けカウンターで秋人君がチケットを購入してくれてる。
クリオネ……クリオネを一緒に見る…
「うし。行くか。」
「う、うん!」
チケットを渡されて二人して中へと入る。
まだ一匹も魚を見てないのに、こんなに楽しくてワクワクするのは、やっぱり秋人君と一緒に居る……からかな?
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