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寝言とおはよう。
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「………………」
「………zzZZ」
職員室に生徒会室の鍵を取りに行くと、鍵はもうすでに誰かが持って行ったと言われた。
誰かと言われて成海か日野、どちらかだろうと思いながら生徒会室に来たけど、居たのは机に体を伏せてスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている日野だった。
僕よりも早く日野が登校するなんて正直驚いた。
真面目に勉強を受けようとしてくれてるから、少しは見直してあげてもいいかなって思ってたけど……
「日野、起きて。」
「…んん…しょう…が…焼き…」
肩を揺すって起こしても、日野はゴニョゴニョと寝言を言ってまた寝息を立て始める。
まぁ…、まだ勉強する時間まで余裕があるから、もう少しだけ寝かせておいてあげようと日野の肩に僕のブレザーを掛けた。
春の朝日はとてもポカポカしているから、背中に当たるその日が心地良かったんだろう。
「……ちゃ…ん」
「……」
会長机に鞄を置くと、日野がまた何か寝言を言った。
気にせず鞄を開けて中からノートや参考書を取り出す。
「……ちゃ、ん…」
「……」
また寝言。
振り向いて日野の顔を覗き込んでみると、ふにゃふにゃと口元を緩ませながらニタァと笑っている。
一体どんな夢を見ているのやら。
「あと五分で勉強始めるから。」
「…んんー……嫌や…」
日野の額がごつんと机に当たる音がした。
顔を背けられ、まだ寝ぼけているんだろうと思って今度は耳元で日野を起こしてみる。
「時間。寝たら早く来た意味ないでしょ。」
「嫌や…って………」
しつこい。全然起きようとしない。
肩を揺すっても、微動だにしない。
「………」
五分経って時間が更に進んで行く。
「ん……それ…おれの…」
「………」
呑気に寝言なんか言って。見直した分またマイナスだよ。
さて、どうしようかと思いじっと日野の寝顔を見ていると、彼はまた口元を緩めにたりと微笑んだ。
その顔を見た瞬間、胸の奥がドキリとする。
「……?…」
ドキリ?……ドキ…?…
「って日野‼︎いい加減起きてってば‼︎」
正体不明の変な気持ちになりそうになる。この男の寝顔は何か危ないものを感じる。
気持ち悪い。ふにゃふにゃ眠る日野を見ていたらこっちまでふにゃふにゃな気持ちになりそうだ。
意味が分からない。
もう一度、今度こそ叩き起こしてやろうと日野の肩に手を置くと、日野が少しだけピクリと動いた。
「……刺青…」
ふとあの刺青の事を思い出した。
この肩には、あの刺青が彫られている。一度しか見てないけど、本当にあれは本物なのか?
もう一度、見てみたい。
そんな事が脳裏によぎり、ギリっと手に力を込めてしまった。
「っ⁉︎」
すると体が一瞬浮いた感覚がして、掴んでいた手を思い切り掴み返され、そのまま机の上に押し倒された。
少し強く打ってしまったのか背中がジンっと痛む。
ようやく起きた日野は、僕の手を掴んだまま上に跨り僕を見下ろしている。
今度は手首を掴む日野の手に力が込められた。
「痛っ……ちょ…日野…」
「どこの組の者や」
「は?」
「どこやて聞きゆうやろが」
「…………」
口調が明らかに違う。
垂れ落ちてきている前髪で日野の顔がよく見えない。
まだ寝ぼけているのか?寝ているのか?
「…………」
「………」
沈黙が続き、手首を掴む日野の手は力を増す。
本当に、一体どんな夢を見ているのか。
「日野‼︎」
「‼︎」
息をめいいっぱい吸い込み大きな声で彼の名前を呼ぶと、彼はビクリと体を跳ねらせ、
「…え……ぁ…い、いっちゃん…」
ようやく起きたようだ。
「おはよう。」
「…へ…ぁ…は、はよ…」
「僕は3年B組だよ。」
「……え?…」
本当に。誰と間違えたのやら。
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