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作り笑い
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「はぁ〜。普通さ、そこはショック受けて『誰⁉︎誰を抱いたの‼︎この浮気者っ‼︎』って泣く場面やろ。」
「お前が誰を抱いたかなんてそんな事どうでもえいわ。それよりはよう退け。重い。」
「可愛いない〜。」
「はいはいどーも。可愛いくない大人ですまんのぉ。」
んべ。と桐島が舌を出して俺を挑発してくる。
俺もおんなじ様に桐島向けて全力のあっかんべーをした。
体を起こすと桐島は再び新聞を読み始める。その隣で俺は机に置かれたスナック菓子に手を伸ばした。袋を開けてバリバリと菓子を食べる。もう桐島なんか知らん。激おこやで俺は。
ふんぬ。ふんぬ。と怒ったアピールをしながら菓子をひたすら食べた。
「んで桐島、親父は何て言うとった?」
「口に物入れて喋るな。汚いわ。」
むっ。こやつほんま言い方というものを考えん奴やな。
ムスッ、とした顔を桐島に向けたら新聞で壁作られた。あーあ。可愛くない。と思いながら牛乳を飲んで口の中空っぽにした。
「一週間以内に連絡してこんと、お前を連れ戻しにここまで来る言うとったぞ。」
「げ……まじで?」
「まじや。もうここの場所はバレとる。他へ引っ越す金なんかもう俺には無いぞ。どうするかはお前が決めろ。」
桐島はそう言うとぱらりと新聞をめくった。
俺は牛乳片手にフリーズしてしまう。
「俺が卒業するまでって約束やったやん。」
「………そうやな。」
桐島は呆気ない返事をして、その後黙々と新聞を読んだ。
スナック菓子に手を伸ばし、パリ、と一つ口の中に入れる。薄塩味や。
けんど、あんま美味しくない。牛乳を飲んでも美味しくない。
俺はシリアス展開は嫌いや。どんなに美味いもん食っても美味しいと感じんなってしまうきな。
「俺帰りたくない。」
「……そうやな。」
そうやな。ってそれしか言えんのかい。
うわ……めっちゃ嫌や。親父に電話もしたくない。家にも帰りたくない。
卒業までせめてここにおりたい。もっといっちゃんらぁとも遊びたい。ザギンとか、ギロッポンとやらにも行ってみたい。
強制的に帰らされるのだけは嫌やな。もうちょい時間稼ぎ出来んかな……
俺がもっと頭良くなれば、親父は俺を認めてくれるがやろうか。
「今日お前が抱いた奴はただの遊びやろ?」
「え」
「遊びならえい。けんど情が湧くほどその女とは遊ぶなよ。」
ペラリとまた1ページ新聞をめくる音が聞こえた。
桐島の方を見たら、目が合ってギロリと睨まれた。
「なんやその顔は。」
「ん、…や。」
俺が抱いたの女ちゃうよ。って言った方がえいかな?
「大丈夫やで。情なんか湧かんよ。ただの遊び。」
「…ならかまん。」
ふい、とそっぽを向いた桐島に向けて俺はあははと言って笑った。
なんか良心が痛むけんど、こう言えば桐島はこれ以上問い詰めてこんしな。
嘘の笑顔なんて俺は大嫌いやったのに、俺は今嬉しくも楽しくもないのに笑った。
俺、結構作り笑い上手いかも。
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