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無言の背中
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ソファの上で暫く放心状態が続いた。その時眼鏡と巨人が何か話してたけど全然耳に入って来なかった。自分が言った言葉が恥ずかしすぎて俺は暫く顔を手で覆ってた。
そしたら眼鏡に抱き起こされて、「帰る準備して。」と急に言われて、乱れた制服のまま眼鏡に腕を引かれ生徒会室を出た。
上機嫌だったはずなのに、眼鏡はなんか怒ってる感じがした。無言で俺の手を引いてぐんぐん前に歩き進んで行く。
「ちょっと寄り道してい?」
「え…」
振り向きもしないで、眼鏡はそう言った。
「め、飯食いに行くのか?」
「もっといいとこ。」
「?」
その後、こいつは何も言葉を発しなかった。
学校を出て、街に入り繁華街を抜け景色がどんどん変わっていく。
相変わらず手首を握られたままだったから、俺は眼鏡の後ろを黙って付いていった。さっきの事がもう恥ずかし過ぎて、歩いてる時もずっと心臓がドキドキしてた。
まさか、巨人と眼鏡は組んでたのか?とさえも思った。けどそう考えたら余計に腹が立ってくる。
あれ程別の奴には触らせるなって言ったくせに、俺……あいつに首筋とか…鎖骨とかいっぱい舐められたんだぞ‼︎
生徒会室の前に居たんなら、早く止めに入って来てくれたらよかったのに‼︎いや普通止めに入るだろ‼︎
「お前、まさかあいつと組んでたのかよ‼︎」
「さぁね。」
「絶対そうだろっ…」
「…さぁね。」
「……っ」
素っ気ない返事が返ってきた。一度も振り向かないで足取りだけが速くなっていく。
今のこいつが機嫌良いのか悪いのか、俺には分からなかった。むしろ俺は機嫌最悪だ。
あんな事言ったのをこいつに聞かれ、無理矢理(?)生徒会室から引っ張り出されて、目的地がどこかも分からないまま腕を引かれてる。
手首を握るこいつの力は強かった。
背中からは明らかに怒ってるオーラ。
でもさっきまで上機嫌だったよな?
巨人と何か話してたけど…それで機嫌悪くなったのかな?
無言のこいつの背中は、いつになっても怖かった。怒ってる時なら尚更だ。
俺が怒りたいくらいなんだけどな。つか明日学校行ったらあの馬鹿をぶん殴ってやる。
今はこいつの対応を考えよう。
何で怒ってんのか分かんねえけど、とにかくこれ以上こいつを怒らせたらいけない。
なるべく慎重に。言葉遣いも柔らかく…柔らかく…
「ど、どこまで…行くんだよ…?」
街の奥まで来た。そして十字路を左に曲がった時、俺が小さい声でそう聞いてみると、眼鏡はやっと振り向いてにやりと笑った。
その顔を見た時、俺は何でここまで大人しく付いて来ちまったのか。何でこいつの機嫌を取るような事を考えてしまったのかと、自分をぶん殴りたくなった。
十字路を曲がると、街の色が変わる。
来た事もない空間の中に、こいつと来てしまった。
「ここって…」
淡いピンク色や紫が目の前いっぱいに広がる。
その色の建物を見るとここがどういう場所で何をするところなのか、来た事ねぇ俺でも分かる。
「じゃ。入ろうか?」
笑顔でそう言ったこいつの言葉が悪魔の囁きに聞こえた。
普通こんなとこ恋人と来たら、キュンキュンしたりドキドキしたりするもんだ。
でも俺は今危機感しか感じてない。ドキドキもクソもねえ。心臓が「逃げろ」と俺に告げて高鳴っている。断じてドキドキキュンキュンはしてない。
「俺さ、最近少し優しくし過ぎたかなって反省してたんだよ。」
「………」
「でもやっぱそれじゃ駄目だよな。お前もそろそろ寂しかっただろ?優しい俺じゃ物足りなかったよな。」
「…………」
ダラダラと額から汗が出てくる。回れ右をしてここから走って逃げ出したいけど、こいつに手首掴まれてるから逃げる事も出来ない。
もう一度目の前の建物を見上げると顔が青ざめて行った。
「……」
間違いない。ここはラブホテルだ…
「なぁ新。」
逃げ出したい。逃げ出したい。逃げ出したい。
頭でそう何度も唱えていると、眼鏡は俺を見て怪しく微笑んだ。
「調教のし直し。しよっか。」
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