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小テスト
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「いやぁ〜、びっくりしたよ。まさかこれ程小テストの点数が上がっているなんて。授業中も居眠りを一切しなくなって本当に関心しているよ。」
「……はぁ…」
「これも月島君の指導のお陰だね。先生嬉しいよ。この調子で行けば、彼は前期テスト、いい線行けるんじゃないかな?」
「はぁ…」
「がははっ、頼んだよ‼︎生徒会長‼︎」
バシッ、と肩を思い切り叩かれる。
その勢いで前のめりになってしまったが、足を踏ん張りその場に留まった。
ひらひらと、手を振りながら去って行く町田先生の背中を見送ると、大きなため息が零れた。
「小テスト…」
町田先生は日野のクラスを受け持っている先生だ。この学校では数学を担当している。
6限目が終わり、生徒会室に向かおうとしたら廊下で町田先生に声を掛けられた。
先生がとても嬉しそうに、「あの日野が、今日の数学の小テスト満点取ったぞ‼︎」と言って来たからついポカンとしてしまった。
……僕のクラスでは、今日の数学の授業は午後、つい先程終わった6限目だった。もちろん小テストもあった。
そして、日野のクラスで小テストが行われた数学の授業は確か3限目…。
数学の小テストはその場採点だから、結果はすぐに知る事が出来る。つまり、お昼休みに入る前には小テストの結果を彼は知っていたはずだ。
「満点…?」
確かに町田先生は、彼が満点を取ったと言った。
…………
……………満点を、取ったと。
「………」
100と付けられた用紙を見て、きっと日野は喜んだはずだ。それこそ、尻尾を千切れるほど振りながら真っ先に僕に知らせに来るはずだ。
でも、僕は何も聞いてない。
彼の口から、満点を取った事を何一つ聞かされていない。
今日の小テストの内容は前期テストに向けての応用編だった。決して簡単な問題では無かった。僕でも問題を解くのに頭を悩ませたのに、彼はその小テストで満点を取った。
「普通知らせに来るでしょ…」
呑気にカレーの話しをするくらいなら、小テストの結果を僕に話してくれたら良かったのに。
そしたら、「よく頑張ったね。」くらいの言葉を掛けてあげたのに。
「でもまぁ…よく頑張ったよ。」
胸がぎゅぅっと熱くなる。自分の事の様に嬉しい。と喜んでいる自分がいる。
小テストの事は、放課後になったら僕に知らせるつもりだったのかな?最後の最後までその事を黙っておいて、勿体振って僕を驚かせようとしてたのかな?
100と赤ペンで記された用紙を見せられたら一体どんな反応をしようか。驚いた顔でもすればいいのかな?
彼、最近テンションの浮き沈みが激しかったから、この期に沢山褒めてあげてモチベーションを上げてやりたい。
「褒めたら調子に乗るかな?」
ふふ、と笑みが零れる。
彼の努力は結果に繋がっている。僕の努力も同じく結果に繋がっている。
成果が目に見えるということは、これまでの努力が無駄では無かったという証拠だ。
「採点ミスでなければいいんだけど。」
また笑みが零れる。何だか胸がくすぐったくて、僕が彼にこの事を早く言ってあげたい。
『町田先生が君の事を褒めていたよ。』『頑張った甲斐があったね。』
そう言えば、彼は一体どんな顔をするのだろうか。
僕が笑い掛ければ、彼も笑ってくれるだろうか。
「そうだ。明日は何か差し入れでも用意しておこうかな。」
たかが小テスト。それで満点を取ったくらいでお祝いだなんて大袈裟だけど、彼の喜ぶ顔が見たいと本心がそう言っている。
口元が緩む中生徒会室へと向かう。
足取りは、いつもより軽かった。
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