アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
気付いてしまったら最後
-
家に着き、自分の部屋がある二階へと上がる。
「はぁ……」
珍しく部屋の電気は付けず、制服も脱がないままベッドの上にパタリと倒れ込んだ。
「嫌じゃない……」
放課後、彼とのやり取りを思い出すと胸がぎゅぅっと締め付けられる。
「嫌じゃ……ないのか…」
同じ事を繰り返し呟くと、その度に日野の顔が頭の中に浮かび上がった。
あの後、成海と新が生徒会室に入って来たから、すぐに手は離した。
もう少し、あのまま2人で居たかったなんて、思ってしまっている今の僕自身が気持ち悪い。
「…………」
………いや、違う……もうやめよう。
自分の気持ちさえも否定するのは、もうやめよう。
…嫌いじゃないなんて、曖昧な言葉を言ってしまったけれど、僕は…恐らく…彼の事を好きになり掛けてる。
“好き。”
モヤモヤしていて、グラついていた気持ちがその言葉にすっぽりと収まる。
「……好き…」
呟くと、体が熱くなって、僕以外誰もこの部屋に居ないのに布団に顔を伏せて、火照る顔を隠してしまう。
「僕が……日野を?」
何度も自分に問いかけるが、辿り着く答えは同じだった。
気付いてしまったら、終わりなんだ。
「………僕が…?」
恋というものは、好きになってしまったら最後、その気持ちに縛り付けられて己を正常に保てなくなる。
最悪だと何度も思った。新と似ても似つかない彼を好きになるなんてありえない事だと。
でも、僕は新と彼を比較していたんじゃない。
新とは違う彼に、惹かれてしまったのかもしれない。
「……日野…は?」
頭の中が彼で満たされる中、一つの疑問が浮かび上がる。
日野は、何度か僕に対して『好き』と言った。
今日だって、何故簡単に人に触れる事が出来るのかと聞いたら、彼は即答で、僕の事が好きだからと言った。
……だけど、その好きは一体何なのだろうか。
“これ以上、好きにはならない。”
彼に抱かれた時、薄れる意識の中でその言葉だけは聞き取る事が出来た。
「これ以上…好きにはならない…」
その言葉を思い出すと、胸が張り裂けそうになる。
布団のシーツを握り締めて、深く顔を埋めた。
「僕だって……」
僕だって、君の事なんか好きにはならない。
あの時は確かにそう思っていた。
「最低だね……」
本当に、酷い男だ。
きっと日野は直感的に好きだと思った相手には簡単に「好き」と言えるタイプの人間だ。
誰にでも親しく出来る。誰にでも同じ様な言葉を言って、同じ様な振る舞いをする事が出来る。
「………っ」
そんな彼を、僕は好きになってしまった。
彼が断言した、『これ以上好きにならない。』という言葉が既に、僕の気持ちを拒絶している様に思えてくる。
…本当に最低だね。
何故君は、『好きにならないで。』と言ってくれなかったんだろうか。
嫌いになれなかった。………
君みたいな人を好きになってしまった僕の思いは
これから一体、どこへぶつけたらいいんだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
412 / 617