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帰っていない。
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自分の気持ちははっきりしてしまった。
もう誤魔化しも効かない。何故僕が日野を好きになったか。その理由はよく分からないが、恐らく、いや多分この気持ちは“好き”なんだと思う。
スッキリしたような、しないような。
何にせよ、僕が彼に好きだと伝える事はきっと無い。
日野は僕の事を好きだと言ってはいるが、その好きはそういう好きじゃない。
何となく。何となくだけど分かる。だから、僕がどんなに本気になっても彼が振り向く事はないだろう。
頑張る必要なんてない。最初から諦めがついていれば、変に期待をしてしまう事もない。
「………………」
なんて…。簡単に諦めていいものなのだろうか。
自分の中で、勝手に終わらせていい気持ちなら、簡単に諦めがついてしまう気持ちなら、好きだなんて感情は芽吹かないんじゃないのだろうか。
……初恋…今思い出すと、僕は沢山酷い事をして来て沢山間違った事をしてしまったけれど、僕は“好き”に対して必死だった。
初恋は実らないと言った舞園は、初恋で得たものは次の恋に生かすものだと言った。
だけど、何を生かしていけばいいのかよく分からない。
あの時の様に、好きだと何度も伝えればいいのだろうか。触れたいと思った時は触れてみたらいいのだろうか。……そうしたらどうなる?…僕ばかり意識して、そのまま陽気な日野のペースに飲まれてしまうんじゃないのか?
「……う…」
なんだか腑に落ちない。僕から接触すれば彼はきっと調子に乗る。
ダメだ。それは僕のプライドが許せない。
授業中も、休み時間も、こんな事ばかりが頭の中をぐるぐるしている。どう行動に移したらいいか分からない事ほど難しい問題は無い。
解決策が沼の底だ。眉間にシワばかり寄せてしまう。
「月島!丁度いいとこに!」
「?」
放課後。
廊下を歩いて居ると、町田先生が教員室から出て来て僕に向かって手を振った。
足を止めると、先生は何やら険しい顔つきをして一目散に僕の元へと走って来た。
「あの…」
僕以上に眉間のシワが寄っていた先生を見ると、顔の力を少し抜いてみる。険しい顔つきの先生に向かい、「何かあったんですか?」と聞くと、先生は力強く僕の両肩を掴んできた。
「月島!最近放課後は日野と勉強会してるよな?」
「え…」
日野?……
「は、はい。」
日野がどうしたんだ?
「今日も勉強会やったか?」
酷く慌てている様で、僕の肩を掴む先生の手に力が入った。
「いえ…今日は役員会議があったので…」
そう答えると、先生は大きなため息を吐いて僕の肩から手を離す。
今日、僕達生徒会は役員会議の方に出席していたから、日野の勉強会は行っていない。
今思えば今日一日、日野に一度も会っていない。
「彼がどうかしたんですか?」
何故先生はこんなに慌てているのだろうと思い、そう尋ねてみると、先生はまた大きなため息を吐き口を開いた。
「彼の保護者様から連絡があってな。最近、日野は家に帰っていないみたいなんだ。」
「え…?」
「学校には毎日来てるから、多分どこかで寝泊りをして、そのまま登校しているのだと思うんだが。月島、日野から何か聞いてないか?」
「………いえ…何も…」
先生からの問い掛けに小さく返事をする。
そして、聞かされた事が頭の中を駆け巡る。
「5日ほど前から家に帰ってないみたいなんだ。学校側も彼の携帯に連絡を入れてみたが返事が無い。明日、彼が登校したらその事について聞いてみるが…」
「………」
5日ほど前から?家に帰ってない…って……
「それ…本当ですか…?」
か細い声が零れ落ちた。先生は僕のその声を聞き取れなかったらしく、その場で立ち竦み頭を掻いている。
……5日ほど前から……
その言葉が脳裏を過る。
先生が言った事が本当なら、あの時二人で下校した後も、彼は家には帰っていなかったということか?
「…せ、先生」
「?」
学校が終わった後…5日間も、彼は一体どこで、何をしていたんだ…?
連絡しても繋がらないって…なら、僕に渡して来たあの携帯番号は…何の為のものなんだ?
「僕からも…連絡してみます…」
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