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電話
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家までの10分という短い時間、歩きながら何度も彼に繋がる携帯番号を眺めた。発信ボタンを押せば日野に繋がる。親指で軽く押せばコール音が鳴り始める…。
「…………」
押せば、繋がる。
「………っ」
だが、何度も試みようとしても親指が震えて発信ボタンが中々押せない。
ドッ、ドッ、ドッ、と心臓が煩く脈を打ち、緊張で喉が乾いてしまう。
「会長として……会長として…」
電話を掛けるのは、掛けたいからじゃない。先生からあの様な事を聞かされたんだ。ここは僕からも彼に連絡を取って彼が本当に家に帰っていないのか確認をして、帰っていないのなら、それなりの問題が発生するから、それの対処を……
「掛けたくてかけるんじゃない。」
家の前に着き、ようやく発信ボタンを押す覚悟が出来た。
電話如きになに緊張しているんだ。と自分を叱る。
意を決し、軽くボタンをタッチしてみると、すぐにコール音が鳴り始めた。
耳に携帯を当て、ゴクリと唾を飲む。
プルルルル、と安定した音が続く中で、僕の心臓の音はより激しく脈を打ち始める。
「…………」
彼が電話に出たらまずはなんて言おうか。
『もしもし、僕だけど。』でいいかな?
“僕だけど”って、それで日野は僕だって分かるかな?
【プルルルル…】
まだコール音が途切れる様子は無い。
……もしかしたら、彼は出てくれないかもしれない。
出てくれなかったら、出るまで掛けるべきかな?
しつこい…って思われないか?
「…出てよ…」
ああもう……一回で出てくれないと困る。
二回目から電話を掛ける方が色々と精神を使いそうだ。
【プルルルル…】
「………」
【プルルルル…】
「……………」
出ない…いつこの音が途切れて留守番センターに繋がるか、そっちの方がヒヤヒヤする。
限界まで、限界まで待ってみよう。
家の前で夜空を見上げ、ひたすら彼が電話に出てくれるのを待った。
【プルルルル……】
「………はぁ」
出ないか。と諦めかけた時、
【…プツッ…】
「⁉︎」
ようやくコール音が途切れた。
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