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緊張なんてするな。
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コール音が途切れると、すぐに向こう側から『はい。』と気だるそうな声が聞こえてきた。
その声に混じって、風の音が聞こえる。
「え、と……」
冷静に、慎重に……
「僕…だけど…」
緊張なんてするな…。たかが電話だ…
『いっちゃん?』
「……っ…」
日野の声だ。電話だから、いつもより近くでその声が聞こえる。
「うん。そう…僕だよ。」
好きだと意識したからか?
声を聞くだけで、ドッ、と心臓の音が跳ねる。
『電話してくれたが?嘘やん!まじか!めっちゃ嬉しい!』
キン、と日野の甲高い声が聞こえて少し耳から携帯を離してしまった。『嬉しい!』と何度も電話越しに言って、彼は喜んでいるようだ。
『え、なに?どうしたが?今日は俺と会えんくて寂しかったき電話してくれたとか?』
…なんでそうなる。
「違うよ。先生から君の事を聞かされて…」
『え』
先生の名を口にすると、日野は突然言葉を詰まらせた。
電話越しだけど、明らかに雰囲気が変わったのが分かる。
『センセェが、なんて?』
普段の日野の声より落ち着いた低い声が聞こえる。
先程までのテンションからのこの落差…。
「あ、うん。」
先生から話された事を、なんて切り出したらいいんだろう…
「数学のプリント…君だけ提出してないって言ってたよ。」
『え?』
ああ、また嘘を言ってしまった。
『プリント?あれ、出したはずやけんど…』
もちろん、即興で付いた嘘だからそうなるよね。
「あ、ごめん間違えた……プリントに未記入欄があったって…」
『??』
何を言ってるんだ…そんな事先生は一言も言ってないのに
「明日…再提出をしてほしいって…」
先生から聞かされた、本当の事を彼に聞かなくちゃいけないのに
『明日?…うーん、分かった!わざわざありがとう!』
「……うん。」
このままじゃ、これで電話が終わってしまう。
「ひ、日野……」
『ん?』
明らかに、彼は今外に居る。
街?…人の声が彼の後ろから聞こえてくる。
本当に、彼は家に帰っていないのか?
「猫……好き?」
『猫?』
なんで僕は話題が無くなると猫の話しを切り出してしまうんだ…っ…
『おん。好きやで。』
「猫アレルギーとかじゃ…ない?」
『?…おう。アレルギーちゃうよ?』
「…そ、そっか…」
喉が乾く。ドキドキしてる。手に汗かいてる…。
「え、と……」
これから何を言えばいい…?…
「今から……僕の家に…来ない?」
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