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嬉しい。
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学校が終わって、久し振りに放課後フリーな時間が出来て、特に何もする事なかったき街に出て適当にフラフラしよった。
その途中、電話が何回も鳴ったけんど、画面に桐島の名前が出ると俺は電話には出ずに携帯を閉じた。
しつこく何回も繰り返し電話が鳴って、登録してない番号からまで掛かって来た。
まぁ、学校が俺に電話して来たがやろうな。とすぐ検討が付いたけど。
その電話にも出んかった。
なんで今日はこんなに電話がかかってくるか。
それは多分、俺がこの5日間家に帰ってなかったきやと思う。
桐島が学校に電話して俺の事を話したがや。
察しがつくと更に電話に出るのが嫌になった。
けんど、最後に鳴った電話はまた違う番号からやった。学校はいくつも固定電話の番号持っとんのか思うて、あまりにもしつこかったき渋々その電話には出た。
そしたらや。電話をかけて来たのは学校でも桐島でもない。
いっちゃんやった。
声聞いた瞬間、正直めっちゃ嬉しかった。
俺、携番渡したけどいっちゃんの携番聞くのすっかり忘れとったし、向こうから連絡してくれるなんて夢にも思うてなかった。
ほんま、嬉しかったなぁ。
おまけに今から会おう!みたいな流れになり、俺はいっちゃんの家にお邪魔する事になった。
……まぁ、いっちゃんが電話して来た理由も、ちょっと考えたらすぐ分かったけど。
理由がなんであれ、俺は嬉しかった。
気を遣ってくれたがかな?
俺が家に帰ってない事については何も聞かれんかった。
「日野…」
「お。」
そして、電話を切ってから、30分後にこの交差点に来て欲しいって言われて、俺はすぐにここへ駆け付けた。
「え…いつから居た?」
約束の時間丁度にいっちゃんは迎えに来てくれた。
「ん?俺も今来たで。」
笑ってそう返すと、いっちゃんは少し首を傾げた。
嬉しくて15分も前からここに来とったなんて言うたらなんか恥ずかしいしな。
「学校で会ってないだけでなんか久し振りに感じるなぁ。」
いっちゃんの顔を見ると自然と笑みが零れる。
俺が言うた事に対して、いっちゃんは「別に僕はそうでもない。」と答えてそっぽを向いた。
ふふ、とその反応が可愛くてまた笑みが零れる。
「あれ?いっちゃん、なんか髪の毛濡れてない?」
「お風呂入ってた。」
お風呂?こんな早くから?
「ほー。」
毛先からポタリと雫が落ちとる。
俺は制服のままやけんど、いっちゃんは下は紺色のスエットのズボン、上はパーカーで思っきしジャージ姿やった。というより、部屋着かな?
「……なに?」
「ん、…や。」
制服以外のこんな姿見るの初めてやし、しかも部屋着って。
「新鮮やなって思うて。」
「?」
いっちゃんもこんなラフな格好するがやなぁ。
この格好でベッドの上で枕抱き締めて寝とったらさぞかし可愛えいがやろうな。寝返り打つ度に腹チラとかあれば尚良し。
「ジロジロ見ないでよ…」
「あは、すまんすまん。」
お風呂上がりやき、いっちゃんはいつもより顔が赤いがかな?
髪の毛まだ乾いてないみたいやし、長く外におって風邪引いたらいかんよな。
「ほんまに家行ってえいの?」
「いいよ。今日、両親は帰って来ないから。」
チラリと一度目が合ったけど、すぐに逸らされた。
「ん。じゃお邪魔させてもらうな。」
「…うん。」
なんで急に、いっちゃんの家にお邪魔させてもらえるようになったかはよく分からんけんど、今日も家に帰るつもりは無いし、かと言って特にどこで何をするって訳でもない。
やき、お誘いが来た時はほんまに嬉しかった。
「そうだ。ねぇ、晩ご飯はもう済ませた?」
交差点を渡ると、いっちゃんがそう聞いて来た。
「一時間前にアイス食べたで。」
「ならまだだね。出前でも取ろうか?」
「え?えいよそんな贅沢な…」
「いいよ。代金は僕が払うから。」
スタスタと、いつもより早足のいっちゃんが俺にご飯を奢ってくれると言うた。
お風呂上がりやきか?夜風に当たったら火照っとる体も冷えるはずやのに、いっちゃんはまだ耳まで真っ赤やった。
「ちょい待ち!」
「⁉︎」
っと。それよりも、家にお邪魔させてもらうのにご飯までご馳走になったら漢が廃る。
「コンビニでなんか買ってこうや?」
「…でも、今財布持ってな「俺が奢るき!」」
ここは俺が漢を見せる時や。
いや、出前に比べたらコンビニなんて安いもんやけんど…
「……………」
「確かコンビニすぐ近くにあったよな?」
「ある、けど…」
「決まり。コンビニ行こ?」
「…………」
いっちゃんは足を止めてうーん、と悩み込んだ。
コンビニ行くのにこんな悩む人初めて見た。
「後でお金返すね。」
「やき俺の奢りや言うとるやん。」
「………」
「ほら、はよう行かんとコンビニの弁当他の客に買われて全部無くなるで。」
「ちょっ」
焦れったく悩み込むいっちゃんの手を取りコンビニの方向へ歩き出す。
「日野っ…手っ」
「いいやん〜。夜やし暗いき他からは見えてないって。」
「見えるに決まってるでしょ!」
「だってこうせんといつになってもコンビニ行ってくれそうに無いやん。」
「行くよっ…行くから……っ」
ぎゅー、と反対の手で繋いだ手を引き剥がそうと押してくる。
目線を斜め後ろに向けると、慌てながら下を向いて、顔から漫画みたいに汗が飛びよるいっちゃんの顔が見えた。
「いっちゃんの指って、前にも思うたけど細いよな。」
「君が大き過ぎるだけだよ…」
「ん〜。俺の手は普通やと思うけんど。」
「君の普通は普通じゃないんだよ…」
「ふ〜ん。」
ぎゅっ、と細いその指を握り締める。
「……っ…痛いよ。」
「あはは、このまま思いっきり力入れたら折れてしまいそうやな。」
「からかってるの?」
「ん〜ん。可愛くてついな。」
「………」
本当に、俺が本気出せばいっちゃんの指なんか簡単に折れてしまうやろうな。なんて考えながらその後もいっちゃんの手を引いてコンビニまで歩いた。
コンビニ付近に来ると、人目をやたらと気にしとるいっちゃんを見て、俺は手を離した。
「…なにその顔…」
ちょっと怒っとるいっちゃんの声。
「ん、なんもない。」
「?」
自分では気付いて無いがかな?
「嬉しいなぁって。」
恥ずかしがりながらもさ。いっちゃんは
『手を離して』って。一言も言わんかった。
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