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欲情
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「一つ聞いてもいい?」
「ん?」
少し戯れが過ぎたかもしれない。
「君……最近家に帰ってないって本当?」
「……」
何故彼をここに呼んだのか。
学校で聞かされた事が本当かどうか。
僕はそれを確かめる為に彼を呼び出したんだ。
「んん〜。まぁ。」
「……」
唐突に聞いてみたはいいが、この先の会話が繋がらない。
彼はソファの上に寝そべり、リリィを腹の上に乗せ頭を撫でている。
僕はキッチンから話し掛けているのだが、彼の顔はソファの背もたれに隠され見えない。
キュ、と蛇口を閉めて彼の元へと向かった。
「なんで家に帰ってないの?」
「なんとなく?」
そう答えた彼は体を横に向け僕から視線を外す。
なんとなくという理由だけで、5日間も家に帰らないという事があるのか。
「…帰ってない間は、どこで寝泊まりしてたの?」
「ネカフェとか、まぁそんなとこかな。」
少しだけ、彼の声のトーンが低くなる。
どこまで聞いていいのか、どこまで僕が踏み込んでいいか。
その境界線を慎重に見計らう。
「食事はいつもどうしてるの?」
「適当に買って、適当に食べとる。」
僕の質問に淡々と答える彼は相変わらず僕に背を向けている。
ソファの背もたれに添えた手を握り締めると、手の平にじんわりと汗をかいていた。
「日野…」
「いっちゃんさ。」
「なっ」
再び声を掛けようとしたら、日野は急に起き上がり僕の腕を引いた。
その拍子にリリィは彼の上から飛び降り部屋の隅へと駆けていった。
「な、に…?」
腕を引かれた瞬間、僕は前屈みになり、日野と顔が接近する。
「日野…顔…近い…」
まただ。心臓が、ドクン、ドクンと脈を打つ。
正常じゃない胸の音に戸惑いが生まれる。
「なんでそんなに俺の事気にしてくれるが?」
「なんでって…」
「会長として?」
「………」
「それとも、個人的に気に掛けてくれゆうの?」
「う…」
駄目だ。目を逸らすな。
「なあ。なんでそんな顔赤くしちゅうが?」
「してない。」
さらりと、横髪を撫でられる。
顔が赤いだなんて訳の分からない事を…なんで君相手にそんな顔…
「なぁ?人がさ。最も欲情しやすくなる場所って、何処やと思う?」
「え」
欲情しやすくなる場所?
「日野、ふざけるのもいい加減に」
「俺はさ。」
「っ⁉︎」
また勢いよく腕を引かれ、ソファに押し倒される。
流されるな、突き放せ、聞く耳を持つな。
頭の中ではそう自分に警告しているのに、彼の目から逃げられない。
「俺はさ…相手の家におる時が、一番欲情しやすくなると思うで。」
見上げる彼の顔、彼の目、彼の口、吐息、声。
「ど、退いて…」
鳴るな。やめろ…なんでドキドキしてるんだ僕は
「本意やない抵抗は誘いゆうのと同んなじやで。」
「…っ⁉︎」
髪に触れられただけだ。彼のペースに飲まれるな。
「家に呼んでくれたの、めっちゃ嬉しかったで。でもな。いっちゃん、ちっとは警戒せんと。」
近付いてくる日野の顔から顔を逸らしても、彼の手でそれは阻止される。
大きな手で顔を掴まれ正面を向かされる。
「いっちゃんのニオイで満たされた場所に呼ばれたら。我慢出来んくなるやん。」
「……っ」
これも、彼にとってはただの遊びで、きっと話を逸らすためにこんな事をしているんだ。
そして僕の反応を見て、面白がってるだけだ。
「いっちゃん…」
「ぅ、」
耳に息が掛かる……
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