アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
駄犬とオオカミ
-
夜風に当たっていっちゃんの髪はすっかり乾いちょった。髪を撫でるだけでシャンプーの香りがふわりと鼻に届く。髪だけやない。腕からも、首筋からも、全身からいい匂いがする。
「俺と会うために風呂入ってくれちょったが?」
顔を下に落としいっちゃんの横髪にキスをする。
「馬鹿な事言わないでよ。汗かいてたから入っただけだよ。」
「ふ〜ん。」
なんで俺を家に呼んだかなんてもう分かっちゅうけど、別の理由があればいいなって思った。
私生活の塊である自宅に俺を呼んで。風呂まで入って。おまけに部屋着姿って…。
「随分心開いてくれちゅうがやね。」
「は?」
別に、俺が家に帰ってない事なんか明日学校で聞けばえいのに。提出物に記入漏れがあったらしいなんて嘘付いて。
「ほんま可愛いなぁ。」
堅物やと思うとった人にそんな事されたら、どんな奴でもキュンキュンするやろ。
「シたいって言うたら怒る?」
「…ほんとにいい加減にしてよ。」
「満更でもないやろ?」
可愛いくて、美味そうやと思ったら食べたくなる。触れたくなる。それが男ってもんや。
「な?好きやでいっちゃん。」
「…………」
そう。俺はこの時完全にいっちゃんがウサギに見えた。俺の下でプルプル震えて、耳垂らして顔を真っ赤にする小さくてか弱いウサギ。
「へぇ。好き……ね。」
「えっ」
そしてそのウサギは一枚皮を脱ぐ。
「どわっ⁉︎」
ネクタイを掴まれて一気に下に引き寄せられる。
肘がカクン、と折れ体制が更に低くなりいっちゃんと顔が近付く。
「嬉しいよ。」
「へ…?」
俺はいつも肝心な事を忘れてしまう。
「僕も好きだよ。日野。」
「え、ちょ…ンっ⁉︎」
可愛いウサギは、実はオオカミやって事を。
「ふ、ンっ、んん⁉︎」
ネクタイは引っ張られたままで、左手は俺の後頭部に添えられ、そのままキスをされた。
「ちょ、いっちゃ…ンっ」
キスをされた事にも驚きやけど、それよりもさっきなんて言うた?
「っ、はぁ、ま、待ってや!ちょ…んん⁉︎」
聞き間違いか?それともちと悪ふざけが過ぎたか⁉︎
「待って。っておかしいよね?誘って来たのは君だよ?」
「っ‼︎」
目が怒っとる……
「い、いやぁ〜。こんなあっさりな展開になるとは思うてなくてあはは…」
怒っとる…まじで怒らせてしもうた…
「ご、ごめんなあ?そんな怒らせるつもりはなかったがよ。」
「怒る?」
「や、…やきほら…ちょっとふざけ過ぎたかなって…」
顔が近い‼︎
この状況では目も逸らせん。いっちゃんはずっと俺を睨み付けて来よるけど、俺が言うたその言葉でもっと目が怖くなった。
「本当むかつくよね。君って。」
「やきごめんちや!」
「日野。君に振り回されるのはもううんざりだ。」
ヤバい。まじこれはヤバい。
ネクタイが…っ引っ張られてちょい苦しいっ‼︎
「シたいんでしょ?」
「ふぇっ?」
オオカミの対処法を俺は未だに分かってない。
「じゃあ。シようか。」
「い、いっちゃん?」
ウサギを食べようと思うた駄犬が、オオカミに変化した奴に敵うのか。
「今度は僕が上で。」
否。敵うわけがない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
422 / 617