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意思と行動
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「先生……その話本当ですか?」
「ああ。今朝学校にそう連絡が入っていた。」
「…………」
放課後、教員室に呼び出された。
町田先生は険しい顔付きで溜息を何度も吐いている。先生の机の上には見た事も無い資料が積まれ、そこに記された文字を見ると全身の血が引いていく。
「すまないな。家庭の事情だと言われたらこちらも手が打てなくてな。」
「…………」
軽く肩に手が置かれ、先生は机と向き合った。
僕は「失礼しました。」と浅く頭を下げた後、教員室を出る。
「……………」
廊下に出ると脱力感が襲ってくる。
トボトボと足を進め生徒会室ではなく教室に向かった。
頭の中で、先程先生から聞かされた話しがぐるぐる回っている。
「なんで急に…」
物事とは、自分が思い描く通りには中々進まないもので。こうしよう。ああしようと決意をした時には手遅れである事が多い。
教室に着くと携帯を取り出し、『今日の勉強会は無しだ。』と成海にメールを打ち、鞄を手に取った。
朝は普通だった。いつもと変わらない日野だった。
そして昼休み。彼にもう一度気持ちを伝えると決意した。
そして放課後…先生に呼び出された。
「……」
放課後になる前、日野は5限目が終わった後、僕の所に来た。
用事が出来たから今日は帰る。とだけ告げられた。
「中退…」
呟くと、目の前が真っ暗になる感覚。
体の熱が一気に冷めていく。
……何も話してなかった。彼は普通だった。
いつもの気の抜けた顔で「また来週な。」と言っていた。
「………」
結局彼は僕に何も話してくれない。
ここ最近、毎日必死になって勉強を頑張っていたのに、その結果を出す前に中退だなんて。
「…なんで」
日野がそう望んだのだろうか。
だけど、彼が学校に来る事を嫌っている様には見えなかった。むしろ毎日楽しそうにしてた。
嫌いだと言ってた勉強にも熱心に取り組んでいた。
……家で何かあったのだろうか。
ぐるぐると色んな事が頭の中を旋回する。
「……はぁ。」
やらなければいけない事が沢山あるのに、自然と足は校門の外へと向けられていた。
今朝まで何でも無かったのに、この時校門を出る足はとてつもなく重く感じた。
重い足取りの中で携帯を開く。
電話……掛ければ出るだろうか。
突然の出来事に混乱しつつも、頭の中は冷静になっていく。
決めた決意は鉛のように固まり腹の奥に落ちてしまった様な感じがする。喉まで引っ張り上げてくる気力が出てこない。
かと言って、このままでいいとは思えない。
「…………っ、」
いや、大体なんで日野の事で僕がこんなにモヤモヤしなくちゃいけないんだ。
大体なんなんだ。いい加減な事ばかり僕に言ったくせに、責任の一つも感じてないのか?
「ムカつく…」
拳を強く握り締め、学校へと引き返す。
どうすればいいなんて考えてる暇は無い。
というかこれ以上僕だけこんなに悩むのは嫌だ。
今日は金曜日。中退すると決まれば手続きはあっという間に進んで行く。
来週かもしれない。どうせ僕に何も言わず辞めるつもりなんだろうけど、そんな事させない。
冷静。冷静だけど僕がこんなに悩んでいるのに涼しい顔してる日野を思い浮かべると酷く腹が立って来る。
無頓着なだけだろ。と成海は言った。
確かにそうだ。あの馬鹿は全てにおいて無頓着だ。あの馬鹿は‼︎
……だから、僕が全部教えてやる。
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