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取り引き
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門まで迎えに来てくれたのは、ここでは舎弟と呼ばれる男性の方々だった。
どれほど恐ろしい形相で僕を出迎えてくれるのかと思っていたが、桐島さんから僕の事をどう聞かされていたかは分からないが、門を開けてこちらを見るなり、「おおお!」っと歓声を上げ、笑顔で僕を中へと引き入れてくれた。
細身で金髪オールバックの20代男性、小太りで華やかな柄シャツを着た20〜30前半くらいの男性、30後半の大柄な男性、計三人の方々に連れられ、敷地内に足を踏み入れた。
その途中桐島さんと合流して、早々に最終確認。
『本当に後悔はしないか?』と聞かれ、僕は後悔しないとはっきり答えた。
そして桐島さんから今から起こる出来事を予兆的に知らされ、日野の元へと連れて来てもらった。
日野はさすがに驚いた顔をしてた。
そりゃそうだ。僕がここに来るなんて彼自身これっぽっちも予想してなかっただろう。
……………
「なんでここに来た……?」
「………駄目だった?」
「当たり前やろっ…こんなとこいっちゃんが来る場所やない。」
驚いていたけど、次第に日野の顔は陰りを見せ、発するその声はいつもより低く重たい。
「……」
「…………」
何か言いたそうな顔をして、それでも口をぐっと閉じ、僕の方を見つめたまま日野は黙り込んでしまった。
迷惑だったかな?なんて思ったが、そんな事もう気にする暇はない。
「ちゃんと挨拶がしたかったんだ。」
「え…?」
ボソリと呟いた後、日野の背後に居座るその大きな存在へと視線を向ける。
「初めまして。月島樹と申します。この度は、貴重なお時間を設けてくださり誠に感謝致します。」
深々と日野のお父さん、つまりはこの組の長、“組長”に向かい頭を下げる。
貫禄があるその容姿とオーラ。
僕が今見えているのは床なのに、重い視線を向けられていると体が感じ取っている。
頭を上げる事を躊躇してしまいそうになる程、鋭い視線。
「まぁ顔を上げ。」
「………」
頭を上げる事を許され始めて腰を伸ばす事が出来る。
「ん〜。美人やのぅ〜。」
ジロジロと全身を舐め回すかのように眺められ、にこりと目尻にシワを作り、うんうんと頷きながら組長さんは笑った。
手招きをされ、ソファの方へと近づこうとした瞬間、ぐいっと腕を後ろから掴まれた。
「いっちゃんいかんて、今すぐ帰り‼︎」
珍しく眉を吊り上げ、怒った顔をする日野。
「……………」
「……帰りて…」
「……………」
「頼むき……」
「………」
何故日野がこんな表情をしているのか僕には分かった。
「大丈夫だよ。」
「っ…」
ゆっくりと日野の手を離し、再び組長さんへと体を向ける。
………先程、日野と組長さんのやり取りを扉を挟み聞いていた。
「それで、わしはあんたにケジメを付けて貰いたいがやけんど、異議はあるか?」
「…………」
組長さんもそれを知った上で、話を進めている。
「ありません。」
そう答えると、組長さんはにやりと笑う。
後ろで日野がまた何かを言っていたが、それすら僕には遠くに聞こえた。
「ええ覚悟や。」
「………」
これは一種の取り引きでもある。
そこに周りの意見なんて関係ない。
「桐島から話しは聞いたけんど、そいつはこの組の未来を担う存在や。それをあんたは「ください」言うた。簡単に引き渡せるもんでもない。ましてやおんしは一般人で男や。」
「はい。」
「…まぁ、別にそれが悪いとは言わん。龍の覚悟もわしには伝わった。組より大事なもん言われたらわしも身を引かざるを得ん。けんど、タダでこの組の大事な存在を渡す訳にはいかん。」
「…はい。」
坦々と取り引きが行われる。
緊張を通り越し、心は静まり返っている。
桐島さんから予兆的に知らされた事は、この世界においての取り引きの仕方。
『何かを得る為には何かを捨てなければいけない。捨てるものは、得るものと同等の価値を持つもの。相手を納得させる事が出来るものでなくては、取り引きは受け入れて貰えない。だから、何を要求されても、それを捨てる覚悟で取り引きをしろ。』そう言われた。
「そうやなぁ……」
「………」
顎に手をやり、うーんと悩む組長さんに向け、「覚悟は出来てます。」と言うと、組長さんはまたにやりと笑った。
「じゃあ、その腕一本貰おうか。」
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