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会いたいな
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テスト。
テスト結果。
結果の張り出し。
なんて恐ろしい響きなんだ。
今まで、これ程までに恐ろしいと感じた事があっただろうか。
………正直、テストは苦手じゃない。
とびきり出来ないって程僕は頭は悪くない。
勉強は好きじゃないけど、苦手になる前に必死になって学習に取り組んだから、嫌いという程まではいかない。
それもこれも、生徒会に入る為に、少しでも先輩の近くに居れるように。
入学当初からの憧れの人、尊敬してる人、なにより好きな人の為に頑張った自分が居たから、今の僕が居る。
今は別の人が好きだけど……
コホン、さて。
今回のテスト結果も学年2位。
はいここ注目ね。
2位だよ。2位。
「っしゃあ‼︎‼︎なんとかトップの座は守った‼︎」
「……………」
うん。隣で両手を上に挙げ大喜びしてるのは他でもない。
渋谷君だ。
「大崎と一点差か……やべえな、次は抜かれるかもしれねえ。」
「…………」
「でも負けねえからな‼︎‼︎はんっ、眼鏡もさ、何が「お前は今回大崎に抜かれるんじゃね?」だ‼︎舐めやがってこの結果見たら驚きであいつの眼鏡割るんじゃね?いやむしろ割れろくそ眼鏡が‼︎」
「……………」
「まあ大崎!お互いテストお疲れ様‼︎次も頑張ろうぜ‼︎」
「…………うん。」
ポン、と肩に手が置かれ、100%スマイルを残していった渋谷君は、上城先輩にこの事を報告すべく陽気な足取りで僕の前から去っていった。
「……………2位…」
もう一度、張り出された結果用紙に目をやる。
「2位…」
別に1位を狙ってた訳じゃない。
でもさすがに、いや、やっぱり一点差ってなるとショックがデカイ。
もしかしたら、あと1点、僕がミスをしなければ渋谷君を抜いてたかもしれない。
そしたら、僕は胸を張って秋人君に結果の報告が出来たかもしれない。
「はぁ………」
1位取ったよ。って…言ったら秋人君はきっと大袈裟に喜んでお祝いしてくれるんだろうな。
「へえ。凄いね。二人とも優秀だ。」
「ぴゃっ‼︎」
ため息を吐くと同時に、背後から声が聞こえ僕は驚いて背筋をピンと伸ばしてしまう。
「あ、ごめん…驚かせちゃったかな?」
「…か、会長っ‼︎」
振り向いてみると、ニコニコ笑顔の会長が僕を見下ろしている。
「今回のテスト、例年より難しいって先生言ってたけど、二人ともいい成績を出す事が出来たみたいだね。」
「い、いえ…僕は…そんな……」
会長とこうして話すのは久しぶりだ。
いや二人きりなんて初めてじゃないのか?
「さて、テストが終わったら体育祭だね。」
……それより、会長はつい最近だけど、5日も学校を休んでた。
「そ、そうですね。」
それまでの会長の仕事は全部上城先輩が代わりにこなしてたみたいだけど、先輩、その5日間は物凄く険悪な顔をしてた。
話によると、会長からメールで『5日程僕の代わりを頼む。』って伝えられてたみたいだけど…
「ん?どうしたの?」
「ふあ‼︎な、なんでもないです‼︎」
「?」
顔を覗き込まれ、そっぽを向いてしまう。
「んあ‼︎いっちゃん見っけ‼︎」
すると、廊下の先から会長を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「いっちゃんいっちゃん‼︎聞いてや‼︎俺クラスで3位やったで‼︎」
バタバタと全力疾走しながら、会長の元に駆けてきたのは日野先輩だ。
「日野、廊下は走っちゃ駄目でしょ。」
「あだっ」
ポカリと日野先輩の頭を叩いた会長は、ため息を吐きながらも、今度は日野先輩の頭に手をポン、と優しく置いた。
「でも、よく頑張ったね。」
「へへ、ん‼︎全部いっちゃんのおかげ‼︎」
「そうだね。僕のおかげではあるけど、君の努力無くしては得られなかった事だ。この調子で頑張って。」
「おん‼︎‼︎」
「………………」
気のせいかもしれないが、日野先輩と会長の周りに花が飛んでる気がする。
「日野、今日の夜空いてる?」
「ん!空いちゅーよ❤︎」
「なら僕の家においでよ。夕食一緒に食べよう。」
「え‼︎‼︎まじで‼︎行く‼︎食べる‼︎」
「………………」
そして気のせいかもしれないが、誤解を招くような会話をしている。
いやこれは気のせいじゃない‼︎‼︎
「あ、あの……会長…」
「ん?」
会長は5日留守にした後、次の日から日野先輩と登校してる。
僕は知ってるぞ。
眠たそうに大あくびをする日野先輩を連れて毎朝早くに学校へ登校し始めたという事実を。
それに会長は前より凄く表情が柔らかくなった。
これは空白の5日。きっと日野先輩と何かあったに違いない‼︎‼︎‼︎
「や、やっぱり…なんでもないです…」
「?」
でも僕はそれを聞く勇気が無い。
というより会長にそんな事聞けない。
「すみません…僕はこれで失礼します…」
頭の中がパンクする前に立ち去ろうとお辞儀をする。
横目でもう一度会長の方を見てみると、会長にべったりとくっついた日野先輩と、呆れた顔をしながらも、優しい微笑みを日野先輩に向ける会長。
「……まさか…会長と日野先輩…」
いや、そんなまさか……いやいやまさかな…
でも、もし僕の妄想が事実だとしたら、上城先輩や渋谷君は知ってるのかな?
二人は知ってて当然か。
僕は知らされないというか知る必要も権利もない。
いやまだそうと決まった訳じゃない。
………でも、そうだとしたら、なんか…僕だけ知らないのは寂しい。
「…………」
日野先輩も会長も…すっごく嬉しそうに笑い合ってる…
「………あ…きひとくん…」
トクンと鼓動が脈を打つ。
人の幸せを見るのは好きじゃなかったけど…
今は……
「会いたいな…」
僕にも、そうやって想える人がいる。
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