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小さな幸せ
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会いたいと思った矢先の出来事だった。
ヴヴッ、と鈍く携帯電話がポケットの中で振動した。
すぐに携帯を取り出し、画面に表示された名前を確認する。
「秋人君っ‼︎」
その名前を口にすると、ドッ、と心臓が跳ねた。
まさか、会いたいって思った瞬間メールが来るなんて。
たった一通のメールが僕の携帯に受信されただけで、携帯電話が宝箱の様に思えてついぎゅうっと胸に当てて喜んでしまう。
僕にとって、この携帯は本当に宝箱そのものなんだ。
秋人君からのメールや着信。秋人君からの言葉やメッセージが沢山詰まった、大事な、大事な宝箱。
少し前までは携帯電話なんてどうでもいい物だったけど、今はきっと、携帯電話が無くなったら僕は死んでしまうかもしれない。
寝る時に『お休み。』って伝えれなくなる。
起きた時『おはよう。』って伝えれなくなる。
それは困る。やだな……
聞きたい時に声が聞けなくなっちゃうのは寂しい。
………なんて、ここまで考え込んでるなんて引かれるかな?
死んでしまうかもなんて。大袈裟過ぎって呆れられるかな?
でも、たった一通のメールが、小さな小さな幸せを運んでくれるんだ。
贅沢なんて言わないから、この小さな幸せが毎日続きますように。って、いつも願ってる。
「……くだらないって言われちゃうかな?」
ううん。秋人君はそんな事言わない。
きっとあの眩しい笑顔で、『俺も』って言ってくれる。
「ふふっ」
今日、学校が終わったら秋人君の家に行く。
きっとそれについてのメールかな?と思い、にやける口元を押さえながらメールを開いた。
「………………」
だが、メールを開いた瞬間、僕はピタリと体を停止させてしまう。
「ぇ……あ…」
メールの内容は
“忍‼︎‼︎‼︎赤点回避した‼︎俺超すげえ‼︎‼︎”
「す、凄い‼︎‼︎やった‼︎‼︎」
“忍のおかげだな‼︎サンキュ♪”
「ぼ、僕はそんな……」
メールの内容を読み進めていく中で、独り言のように秋人君からの言葉に返事をしていく。
赤点回避出来たんだ……良かった…
ホッと胸を撫で下ろし、最後の文に目を通す。
“ご褒美楽しみにしてるな?♪”
「………………」
はい。すっかり忘れてしまっていた事を秋人君はしっかりとメールで送って来てくれてました。
「そうだよ……ご褒美あげるって約束だった…」
ふるふると携帯を持つ手が震え始めた。
まずい。これは非常にまずいぞ。
赤点が無かった事は本当に喜ばしい事だ。
盛大にお祝いしてあげたい。
でも肝心なそのお祝いならぬご褒美。
何をどうするかなんて全然決まってなかった。
「ど、どうしよう…」
何かプレゼントするべきかな?
でも秋人君の欲しいものなんて分からないし、プレゼントを選ぶセンスが僕にあると思えない。
「どうしよう‼︎」
これはきっと、初めて僕から秋人君に何かをしてあげれるチャンスだ。
するからには喜んでもらいたい。
「うわぁぁあん‼︎秋人君何が欲しいのー⁉︎」
頭を抱えて廊下で蹲ってしまう。
秋人君が欲しいもの。あげたら笑顔になるもの。
その二つを成立させる事の出来るものって……
「……なんだろう…」
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