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二回目のおはよう
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少しだけズキズキと痛む体と、まだ重い瞼を開くとすぐ目の前には秋人君の寝顔があった。
気持ち良さそうな顔をして目を閉じ、両腕で僕を抱き締めたまま眠る秋人君は今までで見た事ないくらいに幼く感じた。
「…ん〜」
「…………」
そっと頬っぺたを撫でてみると、薄らと目を開いて顔を僕の首元に擦り付けてくる。
ほんわかとする気持ちの中、僕も秋人君の首元に顔を埋めた。
「秋人君、朝だよ…」
「んー…」
もう少しだけ。と寝言のように呟く彼を、精一杯抱き締めて僕は「おはよう。」と呟いた。
「おはよ……」
「うん。」
「からだ……平気か?…」
「……うん。」
普段よりも小さい声で会話をすると、お互い顔がポッと熱くなる。
昨夜の事を思い出すだけで恥ずかしくて死んじゃいそうだった。
初めて僕は秋人君とセックスをした。ほとんど目を閉じてしまっていたから、秋人君が一体どんな顔で僕に触れていたかは曖昧にしか思い出せない。
だけど、秋人君は相変わらず優しい声で何度も僕の事を好きだと言って、何度も抱き締められて、体中キスをされて、僕をこんなにも好きでいてくれてるんだって幸せな気持ちに包まれる中、僕は秋人君に抱かれた。
行為の中で、体を重ねる事が怖いって思った瞬間もあった。初めてだし、上手くできるかも分からなかった。
でも、どこかぎこちなく、少し震える手で僕に触れる秋人君を肌で感じていると、秋人君も僕と一緒なんだ。って思えて安心出来た。
「朝メシ……作んねーとな。」
「僕も手伝うよ…」
「忍はまだ寝てろ…無理すんな。」
僕に柔らかい笑顔を向け、体を気遣ってくれる秋人君の肌からは少しだけ汗のにおいがした。
「ん〜、起きるか〜。」
上半身を起こした秋人君はうーんと背伸びをする。
その光景は幸せそのものを表しているようだった。
「うん?どした?」
「あ、ううん…」
じぃー、と秋人君を眺めていると、秋人君は視線を僕へと落としてくる。
「…秋人君って身体つきいいよね…」
「そうか?」
「うん…男の子らしいし…」
「はは、まぁ一応筋トレしてるしなぁ〜」
ふん、と腕に力を入れて、膨らむ腕の筋肉を見せられ、僕も同じように腕に力を入れてみた。
「はぁ……僕も筋肉がほしいよ…」
力を入れてもなんの変化も無い細い自分の腕を見ると弱気な言葉が口から零れる。
「忍はそのままがいいな〜。」
シュンとする僕の頭を秋人君が撫でる。
その手も僕の手とは違って、大きくて手の甲には筋が浮き出る男の子らしい手だった。
「馬鹿にしてる。」
「してないって。」
「…………」
むぅっと口を膨らませると、秋人君は微笑みながら僕にキスをしてきた。
チュ、と綺麗な音が鳴り、同時に顔が熱くなる。
「……忍、聞いてくれる?」
「え?」
立て続けに、今度は抱き締められて体を少し引き起こされた。
「俺……餓鬼だし、頭も悪りいし、忍の為にしてやれる事なんて、飯作ったり一緒に帰ったり、好きって言ったり、こうやって抱き締めてやる事しか出来ねえけど……」
「ふふ……十分だよ…」
改まってそう言い始める秋人君と、言われた言葉が嬉し過ぎてニヤける僕。
なんで秋人君が急にそんな事を言ったのか、僕には少しだけ不思議だった。
「俺、将来人の役に立つ仕事がしてぇんだ。」
「人の役に立つ仕事?」
「ん。正確に言えば人助けが出来る仕事かな?」
人助け…
「今まで将来自分が何になりたいとか考えた事なかったけど、忍と一緒に居て、絶対人助けが出来る仕事に就くって決めた。」
「………?」
キョトンとすると、秋人君は苦笑しながら僕の手をとり、自分の腹部へと僕の手を誘導した。
「ぁ…」
ツウ、と誘導された秋人君のお腹を指先で撫でると、以前あの悪夢の夜に僕を庇って負った傷、その手術の跡がある。
「あの時、俺喧嘩でしか忍の事守れなかったけど……つか、守り切れてなかったか…」
「………」
「けどさ。あんな状況の中でも、あの時以上に最悪な状況になっても、忍の事ちゃんと守っていけるような人間になりてえんだ。」
「………」
それは、僕だって同じだ。
自分がいかに無力で臆病な人間であるか、あの時痛い程痛感した。
「僕も……人助けが出来る仕事がしたい。」
そっと秋人君の手を握り締める。
コツンと秋人君の胸に額をくっつけて、僕も秋人君にその意志を伝えた。
「秋人君は強いけど…不死身じゃないから……」
「ん?」
秋人君が誰かを助ける仕事に就いた時、その仕事を日々こなしていく上で、きっと秋人君は沢山怪我をする。
「僕も、秋人君を守れるような人間になる…」
「…………」
沢山怪我をするなら、僕がそれを癒してあげたい。
いつまでもこうやって元気な秋人君を見ていたい。
「じゃ、お互い頑張ろうな。」
「うん。」
「ちなみに俺の嫁になるってのも将来の夢の中に入れといてくれよな。」
「ふふ………僕は男だからお嫁さんじゃないよ?」
「誰がなんと言おうが忍は俺の嫁さんだ‼︎」
「……秋人君元気だ。」
「??…俺はいつでも元気だぞ?」
「ふふ、そうだね。」
「??」
そんな何気ない会話が二人の間で飛び交う清々しい朝だった。
朝日に照らされてキラキラと光る秋人君の顔を見ながら、僕は今こうして秋人君と同じ朝を迎えれる事に幸せを感じていた。
「忍、おはよう。」
「…おはよう。秋人君。」
そして、本日二回目のおはようは
とても暖かく、幸せな言葉だった。
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