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悪夢の競技
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午前中の種目も終盤に差し掛かる。
とりあえず、100m走と『そんなに入れちゃうの?』(玉入れ)の競技は終了した。
100m走はもちろん独走一位。
そして玉入れ。
玉入れには大崎も出てたんだけど、あいつの投げるおはじきは高い場所に設置された網まで届いてなかった。
必死におはじきを投げる大崎を見てると、何故かその時大崎が可愛いと思ってしまった。
「新‼︎お前の本気はあんなモンじゃなかっただろ‼︎」
「うるさいっ‼︎あれが俺の全力だよ‼︎」
「嘘つけ‼︎お前ならおはじき100個投げ入れるのなんて簡単なハズだ‼︎」
「アホか‼︎おはじき100個も無えよ‼︎」
玉入れの結果は赤組が一位。その次黄組、そして最下位が俺たち青組だった。
「いや待てよ。お前球技系は苦手だよな?サッカー以外の。」
「っ‼︎」
ちょっと待て、玉入れってあれ球技に入んのか⁉︎
「秋人てめえ……」
開会式が終わると同時に、秋人がうちの体育祭を見に来てくれた。けど、こいつはいちいち俺につっかかって来る。
「はっ、俺より球技に自信あるからって調子乗んなよ。」
「うわあ〜、それもう認めてる様なもんだぞ。お前がノーコンだって事。」
「ノッ⁉︎…てめえいい加減にしろよ‼︎」
なんなんだこいつ‼︎俺がノーコンだと⁉︎
ふっざけんな‼︎
確かに玉入れの時は一個もおはじき入れられなかったけど‼︎なかったけども‼︎
「俺はノーコンじゃねえ‼︎」
断じて俺はノーコンなどではない‼︎
「ふ、二人ともっ…喧嘩は駄目だよ…」
「忍‼︎」
秋人と睨み合いを続けていると大崎が競技を終えて応援席に戻ってきた。
俺と秋人の間に入って暴れようとする馬を宥めるように、「ドー、ドー」と言ってる。
「忍っ‼︎大丈夫か⁉︎転んだりしてないか⁉︎」
「わっ、だ、大丈夫だよ…」
大崎の体操着に泥が付いてて、それを見た秋人は瞬時に目を見開き大崎の両肩を掴んだ。
大崎はびっくりしてて、でもその瞬間バチッ、と秋人と目が合ったらしく……
「あっ……」
「……ぁ…」
何を思い出したのか、二人とも急に顔を真っ赤にさせて「大丈夫なら良かったです。」「いえ、こちらこそ心配ありがとうございます。」なんてそよそよしい話し方をしてた。
「お前ら何かあったのか?」
「えっ⁉︎」
「ふぁっ⁉︎」
「…………」
唐突に聞いてやると、二人とも茹でダコみたいに更に顔が真っ赤になった。
「…………」
「………」
「……」
じぃーと二人を眺めると、二人とも俺から目を背ける。
「……あーね。」
「っ‼︎」
「ぅっ…」
なるほど。何となく分かったぜ。
「まぁ秋人、お前は俺の親友だ。」
察しが付くと、俺はふっと笑みを零し、秋人の肩にポンッと手を置き秋人の耳元で言ってやった。
「オメデトウ。ちゃんと優しくしてやったかよ?」
「ッ‼︎」
そしたら秋人の奴、ボンッてすんげえ音立ててこれまでにないってくらい顔を真っ赤にさせた。
こんなこいつの顔見るのは初めてで、いじるのが楽しかった。
「新、てめえ……」
「おっと、俺次の競技出ねえといけねえから。んじゃなぁ〜‼︎」
「待て‼︎おいっ‼︎」
いじり倒した後、そそくさとその場を去る。
入場門まで走る中、ちらりと秋人達の方を見てみると、秋人と大崎は二人で俺の方を見て手を振ってた。
そして、手を振り返すと、二人は向き合い何やらまだお互い照れ合ってるようで…。
「………」
なんか、俺の知らないうちに秋人達も随分と距離を縮めてる。
「……別に、他は他だ…っ…」
ポツリと眼鏡の顔が頭に浮かび、ブンブンと頭を振って眼鏡の顔を掻き消した。
体育祭が始まってから、まだ一回もあいつと話ししてない。
眼鏡が競技に出てる時はあいつの応援なんてしてないし、むしろ俺はあいつ(赤組)に勝ちたいから、もちろん自分達の青組を応援した。
……でも、ちょっとは応援してやった方が良いのかな?
なんか、秋人達見てたら…眼鏡に会いたくなった……とか…思ってみたり…
「…こ、この競技で俺の組が一位取ったら…あのスカした顔でも見に行ってやるか…」
一位取って自慢しに行ってやる。なんて独り言をブツブツと呟きながら入場門に辿り着いた。
だが、その時俺はこれから自分が出場する競技が何なのかすっかり忘れてしまっていた。
「……………」
「渋谷、お前アンカーでいい?」
ダチがそう声を掛けてきたが、種目名が書かれたプレートを持つ実行委員の前に来ると、頭が真っ白になる。
「おい渋谷‼︎」
「…………」
そう。忘れてしまっていたんだ。
「……ご、ごめん……なに?」
俺が出る午前の部、最後の種目。
「お前足速いし、女子がアンカーはお前じゃねえと駄目だって言ってるから。」
「………」
くそ……女子共め……アンカーとか1番注目される役じゃねえかよ…
「ま、頑張ろうぜ!」
「………………」
最悪だ。心の準備が出来ていない。くじ運が良いようにって競技前に祈る事もしてない。
これは勘だが、俺は恐らく今日のくじ運は最悪だ。
もしもこの競技で一位取っても、あいつの所に自慢になんて行けない。
『地面に散らばる夢と希望が記された魔法の紙。そこに書かれたもう一人の自分が、貴方の本当の姿なのかもしれない。見てる貴方までドキドキしちゃう。愛くるしい姿でも狙うは一位‼︎』
アナウンス担当の奴が、今から行われる競技をいい感じに紹介してる。
いや、なんだよ…もう一人の自分って…夢と希望が記された魔法の紙ってなんだよ‼︎
愛くるしい姿⁉︎一体どんな姿だよ‼︎
「………っ…」
…っ来てしまった。
『“可愛くてごめんなさい。”間も無くスタート致します‼︎』
悪夢の競技になるであろう、(着せ替えリレー)‼︎‼︎
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