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ろくでもねえ
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ため息が出る程暑い。……今何月だ?
こんな暑い中グランド駆け回ってていいのか?
「成海君っ、お昼どうする?」
「お弁当作って来たの‼︎」
「ちょっとあたしが先に誘ってるんだから‼︎」
…………。
「……はぁ…」
ほんとため息が出る。
「ごめんね。俺、午前の部最後の競技出ないといけないから行くね。」
昼休憩まで残り種目は2つ。
重い腰を上げ待機場所でもある入場門まで行こうとした途端にこれだ。
「成海君‼︎」
「ちょっと押さないでよ‼︎」
「あんたこそ図々しいのよ‼︎」
「………」
ぐん、と裾を引っ張られる。
図々しいのはお前らみんなそうだ。と言ってやりたいが、ここは我慢しておこう。
「悪いけど、昼は先約入ってるから。」
軽く……俺の裾を引っ張る女の手を払いのける。
払いのける動作は優しくしたつもりだけど、今は色々とイライラしてるから少しだけ睨み付けてしまった。
「…………」
まぁ、いいか。
「はぁ……」
ようやくうるさい取り巻きから解放され、入場門へと向かう。
暑くて顔から滴る汗を襟元で拭うと、これから行われる種目のアナウンスが流れた。
けどそんなのもうどうでもいいと思える程、とにかく早く日陰に行きたいと思っていた。
だからこれから行われる種目になんか一切目もくれてなかった。
「昼休憩に入る前にあいつに会っとくか。」
と、そんな事を呟きながら新が居る応援席に向かった。
赤組と青組の応援席は真逆の場所にあって、休憩といっても、行って話が出来るほど時間はない。
入場門に行く途中で少し声を掛けるくらいなら出来たんだけど……あいつ、俺を見たら目逸らすし、かと思ったら俺が競技に出てる時はやたらとガン飛ばしてくるし……
「………」
どうせ例の勝負がどうのこうので燃えてるんだと思うけど。
「せ、先輩‼︎」
新の俺に対する今日の態度はいつもの事だろうと考え込んでいたら、ようやく青組二年の応援席に辿り着いた。
辿り着くと、大崎が俺をすぐに見つけてくれて声を掛けてこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ。午前の出場種目はもう終わったの?」
「お疲れ様ですっ‼︎ぼ、僕はもう終わりました‼︎」
僕は……ってことは…
「あら「よお‼︎成海じゃねえか‼︎」」
新は?と聞こうとした瞬間、いきなり肩に手が置かれやたら元気のある声が聞こえた。
「お前…」
「久しぶりだな‼︎あの時以来か?」
この暑苦しい日に、更に暑さを煽らせる真っ赤な髪。
「………」
“あの時”とは、俺が新をからかって、そんであいつが腹を立てて俺の家を飛び出して……新を追い掛けて行き着いた場所……当時こいつが入院してた病院。
「なんだ?俺の事忘れたのか?」
このがっつき様。忘れるはずがない。
「覚えてるよ。秋人だろ?」
名前を呟くと、目の前の赤髪は嬉しそうな顔をする。
「秋人君、先輩と知り合いなの?」
「おう‼︎ダチだぜ‼︎」
ちょっと待て。お前といつ友達になった?
「大崎の知り合い?」
赤髪を指差して大崎にそう尋ねると、大崎は突然顔を真っ赤にした。
「は、はい……あ、いえ…秋人君はその…」
「??」
タジタジになる大崎を眺めていると、赤髪は俺の肩から手を離し今度は大崎の肩に手を置いた。
「俺は忍の彼氏だ‼︎」
「あ、秋人君っ‼︎」
「彼氏?」
ドーンと胸を張って何の恥じらいも無くそう言い放った赤髪に対し、大崎は更に赤面。
「彼氏…ね…」
そういえば、以前大崎からの告白の返事をした時、『彼氏います。』って言ってたっけ?
「なに忍にガン飛ばしてんだよ‼︎」
「別に飛ばしてないけど。」
「やめろよ‼︎お前にはあいつが居るだろ‼︎忍は俺のだからな‼︎」
「ちょ、秋人君っ」
ガンは飛ばしてないけど、大崎に視線を落としていると急に牙を剥き俺を敵視してくる。
「忍が可愛いのは分かるけどあんま見んなよコラ。」
「………」
俺の事ダチとか言ってくせに何この変わり様。
大崎を背中に隠して牙剥いて、そっちがガン飛ばして来るし…
主人を守る狂犬かよ。
「先輩…その…」
「いいよ。平気だから。」
何故か大崎が申し訳なさそうに頭を下げて来たから大丈夫だと手の平を向けて合図する。
正直大崎の事は心配してた。
彼氏いますとか言ってたけど、本当かどうか分からなかったし、大崎は人一倍人に気を使う奴だから、あの時は俺の為にそう嘘を言ったのかもしれないと思っていた。
「忍、弁当作って来たんだぞ‼︎張り切って重箱にしちまったからいっぱい食べてくれよな‼︎」
「重箱っ⁉︎」
けどこの赤髪が一緒なら大丈夫かなと、その時少し安心した。
「じゃあ俺行くから。」
「え‼︎あの、何か用事があったのでは…」
「あぁ。新に一言声を掛けようと思ったけど居ないみたいだし。いいよ。」
「渋谷君ならこれから行われる種目に出場するので多分、今グランドに…」
大崎がそう言ってグランドを指差す。
「え……」
「渋谷君凄く張り切ってましたよ‼︎」
「………」
張り切ってました。
その一言と、これから行われる種目名を目にしてフリーズしてしまう。
「あいつ…」
競技開始を知らせるアナウンスが再び流れ始め、青組の列に並ぶその人物を見て額に筋が入る。
「この種目に出るなんて聞いてないぞ…」
「先輩?」
俺がこの次に出るリレー種目もふざけた競技だが、この種目はもっとふざけてるだろ。
「ごめん。俺行くね。」
大崎と赤髪にそう告げ、俺はとりあえず入場門へと向かった。
何故俺の額に筋が入ったのか。イライラが舞い戻って来たのか。
それは新がこの種目に出る事を俺に教えてくれてなかった事。
そしてこのふざけた種目の提案者が、この学校の演劇部部長、あの赤メガネだと言うこと。
……すなわち、コスプレリレーとも言えるこの種目はあの赤メガネの趣味、好みが全て詰まってるという事だ。
「絶対ろくでもねえモンしか紙に書いてないだろ…」
新がどう祈ったって、くじ運は最悪なのは変わりない。
「………」
さて…くじ運次第であいつをどうしてやろうか。
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