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帰りたい
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白いカーテンに囲まれた即席着替え室の中。
外から聞こえる歓声や応援の声。同じチームのダチが早く出て来いと俺を急かす声。
そして鏡の無いこの中で、はっきりと自分が今どんな格好をしているか分かってしまう憂鬱。
「……最悪だ。」
自分が運悪いのなんて分かってた事だ。だけど正直こんな事になるなんて思ってなかった。
絶望という言葉が頭の上にのしかかり、この小さい着替え室の中で頭を抱えしゃがみ込んでしまった。
「ふざけんな、ふざけんな…っ…」
と、声に出してみたけど、そんな声はダチ達には一切届いてない。
「最悪だ最悪過ぎる。」
拾ったクジの紙をもう一度眺めグシャリと握り潰してしまった。
着替えが済んだら早く外に出てリレーに戻らなくちゃならないのに、足が一向に動かない。
「渋谷ぁ‼︎何してんだよ‼︎」
「黄組はもう着替え終わってんぞ‼︎」
「渋谷君‼︎」
足元に転がるバトンと、衣装とセットであったソレに目を落とす。
他のチームのアンカーはもう着替えを済ませ走り出したらしく、恐らく最後尾の俺がまだ着替え室から顔を出さない事にダチ達は焦りを感じ始めたに違いない。
だがしかしだ。
こんな格好でグラウンドをダッシュするなんて出来やしない。
「渋谷ぁあああ‼︎‼︎」
「っ‼︎」
い、いや…やるしかねえ。
名前を大きく呼ばれ、ビクンと体を跳ねらせてしまう。
さすがに嫌だからと言って逃げるわけにはいかない。種目を断り切らなかった自分の責任でもある。
なら、責任はちゃんと果たさなければならない。
「しゃっ‼︎」
意を決し、カーテンを勢いよく開ける。
全ての視線が俺に集まった気がした。
「きゃーーーーーーーっ‼︎‼︎書記君ーっ‼︎‼︎」
真っ先に聞こえて来たのは部長さんの声。
その他の奴等はざわざわとし始め、やがてアナウンスがキーンと、マイク音が割れる程の声で叫ぶ。
『こ、これは‼︎‼︎‼︎』
バトンを右手に持ち、左手には機関銃。
「………」
そして俺が今している格好、引いてしまったクジは
『セーラー服と機関銃だあああああ‼︎‼︎』
帰りたい。
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