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貴方は貴方
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「新?こっちには来てないけど…」
「えー?本当ですか?…こちらに来てるハズなのですが…」
「本当だよ。職員室からここまで来たけど、生徒とはすれ違わなかったよ。」
「……そうですか。」
やがて、しょんぼりとした部長さんの声が聞こえると、足音が一つ、この場から遠ざかって行った。
しゃがんだままじっとしていたら、ため息が聞こえて、もう一つの足音がこっちに近付いて来た。
「もう大丈夫だよ。舞園は行ったから。」
「……っ……」
ひょこりと顔を出したのは、ニコリと微笑む会長で……
「か、かいちょお…」
もう駄目だ。見つかる。と思った時に、丁度会長が現れて、女装したまま小さくなり身を隠す俺と、カメラ片手にウハウハしてる部長さんを見て全てを悟ってくれた。
「ゔっ、俺……もう駄目かと…」
「ふふっ、泣かないでよ。ほら、大丈夫、大丈夫。」
会長が部長さんを追い返してくれて、ある意味俺の貞操は守られた。
この恥ずかしい格好を撮られなくて済んだと思うと安心して滝の様に涙が溢れてくる。
会長はポンポン、と頭を撫でてくれて、親指で涙を拭ってくれたりした。
「着せ替えリレーに新が出てるなんて思わなかったから、少し驚いたよ。」
「ゔぇっ、ぐ…」
「大変だったね。」
「ふぇえ……」
また、ダーっと勢い良く涙が溢れる。
まじで情けない顔してると自分でも思う。
「立てる?この格好のままグラウンドには戻りたくないよね?」
「グズっ……」
コクンと頷くと、会長は眉尻を下げて笑った。
「………ふっ、ゔ…」
こんな格好して、ガキみたいに泣いて、会長に宥めてもらって……
「どうしようね…」
まじで俺、情けない。
「すみません……」
会長に迷惑掛けてんのに、心の中ではこの格好を眼鏡に見られなくて済んだ事に心底安心してる。
会長は変に俺をからかってきたりしないし、馬鹿にもしないし、何より優しい。
でも、本当にこれからどうしよう。
俺のジャージはおそらくグラウンドにある。着替える為には戻らなくちゃならねえ。
けどそうなったら絶対部長さんに捕まるし、眼鏡にも会ってしまう。
「………っ…」
どの道、一回この格好でみんなの前をダッシュして回ったんだから、今更って感じだけど、動く事が出来なくて。
「……………」
「………」
会長はずっと俺に視線を落としたままで、見られてると思う恥ずかしくて、膝を抱え俯いてしまう。
「嫌…かもしれないけど、少しの間だけ我慢してね。」
「え…」
何ですか?と言おうと顔を上げた時、体がふわりと宙に浮かんだ。
「え、あ、会長っ⁉︎」
目線が一気に高くなって、会長の顔がすぐ近くにある。
「更衣室まで運んであげるから、そこで待ってて。その後僕が新のジャージ取って来てあげる。」
にこっと笑顔を向けられ、会長は歩き出した。
背中と太ももの裏に会長の腕が回されてて、俺は必然的に会長の胸元にしがみ付いてて…
「か、会長っ…あのっ…」
間違いない。これはお姫様抱っこというやつだ。
「ん?あ…ごめん。スカート気になるよね。僕の首に掛けてるスポーツタオル使っていいから。膝に掛けてて良いよ。」
「〜〜ッ」
いや、スカートは別に気にならない。
女じゃあるまいし、別に下着が見えたって構わないけど……
「あ、ありがとうございます…」
何この王子様感。
そして男を軽々と持ち上げてしまう腕力。
いや俺は元々チビだし体重もそんな無いけど…
男相手にお姫様抱っこって……
「……会長…まじで男前です。」
「ふふっ、新に言われると嬉しいな。」
会長とこんなに近くで話すのも久しぶりだし、触れられる?のも久しぶりだ。
「すぐに戻って来るから。良い子にしててね。」
「……はい…」
やっぱり、会長は会長だ。
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