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過去と今
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送信完了。と画面に表示されたのを確認し、携帯を仕舞った。
お昼休憩に入ると、校舎にはあっという間に人が戻って来た。
すぐそこの廊下では、数人の女子生徒の声が聞こえていた。廊下とこの教室を挟む扉にはしっかりと鍵が掛けられている。
生徒がこの体育祭で出入りしても良いのは、校舎内では食堂と売店、職員室、更衣室、それとトイレくらい。
この日、それぞれの教室には鍵が掛けられる。人数が多い分、貴重品や衣服の紛失などが絶えないから、その事への対応だと先生は言っていた。
中に入る為には先生の許可が必要になる。
だけど、この教室は空き教室の一つであり、生徒会が管理する事になっていた場所。
鍵なんて、先生の許可を得なくても手に入る。
「ンッ、ん…んぅっ…」
「………」
扉の向こう側から聞こえる他の生徒の声。
楽しそうで賑やかな声がするその反対、こちらはまるで別世界のようで、互いが吐く吐息のみが静かなこの教室に消えていく。
「いっちゃ…待っ…」
「待たないよ…」
「んンっ‼︎」
壁に追い詰め、しゃがみ込んだ日野に覆い被さる様にして、再び唇を重ねた。
先程の事があり、まだいつもの調子を取り戻してない日野は、大人しくなった犬の様。
「っ、ん、…ぁっ…ちょ……ま…」
そんないつもと違う彼を目の前にすると、胸がウズウズして、もっと彼の違う部分を見てみたくて、無我夢中でキスを繰り返した。
「はっ……」
唇を離し日野を見下ろすと、頬を真っ赤に染めた彼が物欲しそうな顔で僕を見上げる。
そっと日野の左頬に手を添えると、ピクリと肩を震わせ日野は口を開いた。
「俺……受けは嫌や…」
「………」
気の弱い彼の言葉が聞こえ、少し笑みが零れる。
いつもなら、日野はもっと力強く「される側は嫌だ」と僕に訴えるハズだ。
「それに…いっちゃん、用事あるがやろ?」
「ああ……それならもう大丈夫だよ。」
ジジ、と自身のジャージのファスナーをゆっくりと下げる。同じ様に日野のファスナーも下げ始めると、日野は下を向いた。
「…けんど……」
「………」
今日は恐らく、勘違いをして先走った事を口にしてしまった事に対し反省し、気を落としている。
つまり僕に逆らえる状況ではない。
主導権を僕に譲ったのは彼だ。
それに……
「そう言えば、以前君を抱いた時、僕は君に本当に酷い事をしてしまったね。」
「?」
「ずっと謝りたかった。君を好きになった時から。ずっと…」
あの頃と変わらず、僕は酷い男だ。
だけど、今目の前に居るのはあの頃の日野じゃない。あの頃の僕もここには居ない。
日野は日野であって、他の誰でも無い。
今は、やっと君の事を見て言える気がした。
「………」
「いっちゃん?…」
顔を覗き込まれ、日野が僕の左頬に手を添えた。
大きな日野の手にこうして包まれるのは、とても心地良くて、とても安心出来る。
暖かい日野の手の温もりと、僕を見る目。
「日野…」
「ん?」
名前を呟いただけなのに、日野はとても嬉しそうにくしゃりと笑った。
好きならば、立場を譲る事も出来るだろうけど、僕は今、その立場を譲る余裕が無い。むしろこのままずっと、僕が君だけの支配者だったらいいのにって思ってしまっている。
でもそれは君の事が好きだからで
好きだからこそ
「“代わり”じゃなくて、僕は君を抱きたいんだ。」
全部、僕のものにしてしまいたい。
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