アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
計画とは
-
全力で走って、走って、走って。
やっとスタートラインまで残りわずかのところ。
息切れしながらも、前を走る赤組のランナーの背中を必死で追った。
悔しいけど、あと数メートルの差が縮まらない。
でも、このままこの数メートルの差を維持出来れば、次のランナーで赤組を追い抜けるという確信が俺にはあった。
なぜなら……
「あきひ……あきこぉおおおおお‼︎‼︎」
「おう‼︎」
「絶対抜かれるなよ‼︎」
「任せとけ‼︎‼︎」
「つうか抜け‼︎絶対前の奴抜け‼︎」
「おうよ‼︎」
俺の次のランナーが秋人だからだ。
さて、突然だが時は遡り今から30分くらい前の事だ。
『秋人頼む‼︎最後のリレーにお前出てくんねえか⁉︎』
俺が思いついた解決策とは、うちの学校の体育祭を観に来てた他校の生徒、つまり秋人にリレーに出てもらうというものだ。
『はあ⁉︎んなの無理に決まってんだろ‼︎俺ここの生徒じゃねえし……』
もちろん、初めは無理だと断られた。
当たり前だ。こんなのルール違反だし、バレたら非常にまずいのは分かってる。
でも、俺はもうこれしかないと思った。
『大崎にお前の良いとこ見せるチャンスだぞ…』
『えっ…』
『確かお前んとこの体育祭、平日開催だったよな?』
『…そうだけど…』
『なら俺も大崎もお前んとこの体育祭は観に行けねえじゃん。な?ここで一発かましてやろうぜ?』
『ぐっ……』
言った通り、秋人の通う学校の体育祭は平日に行われる。
理由は単純。男子校な上に不良ばかりが在籍している【鈴ヶ原男子高校】は他校との揉め事も多く、休日に体育祭なんかしたらたまったもんじゃない。去年、鈴ヶ原の文化祭で案の定他校の生徒と揉め事があり、そのまま文化祭が中止になるくらいの大事になったんだ。
それから秋人の学校はイベント事は平日に行うという決定が出た。
『仕方ねえなぁ……けど、バレても知らねえぞ?』
『おう‼︎ぜってーバレねえようにするから‼︎』
秋人には悪いが、そこを利用してこの話に乗ってもらった。
もちろん、バレる確率は高い。
いくら生徒数が多いこの学校でも、秋人みたいな真っ赤な髪した生徒は一人も居ない。
そこでだ。俺はある人に協力を求めた。
『女物のカツラですか?』
そう。部長さんだ。
『あ、はい……あの、使わないカツラとかありますか?』
『それはありますけど……でも書記君、さすがに会長にバレたらいくら書記君でも怒られますよ?』
『大丈夫です‼︎絶対バレないようにします‼︎』
『そ、そうですか……ふふっ、でも確かに少し面白そうですね。』
俺は部長さんの好奇心をも利用した。
すまねえ部長さん。だがあんたの協力無しではこの計画は成立しない。
『はい。返さなくて大丈夫なので、リレー頑張って下さいね。』
『ありがとうございます‼︎』
『ふふっ、まぁわたしは黄組なので、もちろん会長を応援しますが。』
頬に手を添えて、もう片方の手でカメラを持つ部長さんの目がハートになっていたが、気にしないでおこう。
とりあえず俺は部長さんから貰った女物のカツラを手に、秋人のところへ向かった。
体操着は生徒会室にあった貸し出し用の物を秋人に渡した。
体育館裏で着替えを済まして、見た目はちょっとあれだったけど、あの真っ赤な髪を隠す事が出来たらそれだけで十分なんだ。
髪色さえどうにか出来れば、補欠がすり替わっても誰も気にしたりしない。
「任せた‼︎」
「任された‼︎」
そして、今に至るわけだ。
バトンを秋人へと渡し、秋人はそのまま走り出した。
持久力は俺の方があるけど、瞬発力は秋人の方が優れてる。
リレーはバトンを渡し、受け取る際の時間短縮とスムーズさが鍵となる。
「はぁっ、はっ、…はぁっ、…」
出番を終え、息切れをしながらも自分の組の列に戻ると一気に足の力が抜けた。
「やば…しんど…っ…」
地面に両手両膝を付け、リレーの様子を伺ってたけど、やっぱり秋人は足も速い。
前を走ってた赤組の選手と並ぶ程だ。
周りの奴らも、まさか他校の生徒がリレー出てるなんて想像もつかないだろう。
いけねえ事だって、違反行為だって分かってる。
でも、どうしても俺はこの勝負には勝たなくちゃいけねえ。
「よっしゃ……いける…」
俺のチームの3年のランナー、そのアンカーはあの巨人だ。
あいつ、確か運動神経だけは無駄に良いって聞いた。
勝った。と確信し、ガッツポーズを決めた時だ。
「なにがいけるって?」
「へ……」
にったりとした声と共に、俺を大きな影が覆った。
そして一気に冷や汗が滲み出る。
「これはどういう事かな?新くん。」
「……ぇ…ぁ、なに、が…」
まぁ、周りには物凄く観察力がいい人間もいるわけで、それがたまたまこいつだったっていう話なわけで……
「眼鏡……ぇあ、と…これは…」
「ルール違反。だよな?」
「………ぅ…」
計画とは、中々思い通りには進まないもので…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
482 / 617