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褒めてやりたい
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驚いた。何を要求されるのかと思っていたが、まさか「料理の仕方を教えてほしい」だなんて。
「痛っ‼︎」
「あーもう。手元ちゃんと見ろよ」
「う、うるさいっ」
目玉焼きもまともに作れないのに、新は「お前が前作ってくれたオムライスの作り方教えろ」と言ってきた。
だが、新はオムライスの材料が何かそれすらもよく分からなかったらしい。
買い物袋には、オムライスは全く関係の無い食材までもが沢山購入されていた。
「ほら、指出して」
「…っ…」
料理開始10分。玉ねぎの切り方を教えてやると、新は早々に指を切ってしまった。
手早く絆創膏を貼ってやると、新は悔しそうな顔をする。
「目が痛い…」
「そりゃ玉ねぎだからな」
なんで玉ねぎ切ると目が痛くなるんだよ。と聞かれ説明してやると、納得したのか新は再び包丁を手に持った。
「くそ玉ねぎが…ざまぁみろ」
不恰好だけど、なんとか玉ねぎを切り終えると、やり切った顔をして「次はどうすればいい?」と俺の方へ振り向く。
「じゃ、次は肉切って」
一度切り方を見せて、新に実践させる。
包丁を持つ手は相変わらず素人丸出しで、一瞬も目を離してはいけない程に危うい。
「切れねえぞおい」
「包丁を押し付けるんじゃなくて、前後に引くの」
「こ、こうか?」
「そうそう」
いつになく真剣な顔を見せるこいつを見て、やはり少し違和感を感じてしまう。だいたい、どうしていきなり料理なんだ?と不思議でたまらない。
一つ一つの作業に随分と時間はかかっているが、着々とオムライスは出来上がっていく。黒いオムライスにならない様に、火加減には十分気をつけながら。
時折手を貸そうとすると、「手を出すな」と叱られてしまった。
「卵ふわふわにすんにはどうすればいいんだよ?」
「まず卵を綺麗に割れる様にならねえと話しにならんぞ」
「ゔっ…」
結局、1度目の卵を焼く作業は焦げこそしなかったが、形が悪く失敗してしまった。
そして2度目のチャレンジ。
ボールに入った割られた卵。その中には卵の殻が無数に散らばっている。苦戦しながらも何とか全てを取り除いた新に向かってそう言ってやった。
「ちゃんとフライパン傾けて油広げて」
「お、おう」
今度は、新の後ろから覆い被さり、新の手を支え、作業のコツや基本動作を教えてやる。
すぐに体は離したが、1度目よりは手つきが良くなった気がする。
「あっ‼︎」
だけど、卵をひっくり返す動作で、またもや失敗してしまう。
「まぁ、さっきよりは上手くなったじゃん」
「ほ、ほんとか?」
「うん」
そう言ってやると、パッと明るい顔を見せて振り向く。本当に嬉しそうな顔をして、拳を握る新を見ると笑みが零れた。
「時間もいい頃だし、飯にするか」
良くできました。と頭を撫でてやると、「ガキ扱いするな」と言われてしまった。
けど、あの黒い食べ物しか作れなかった新が、まともな飯を作れる様になったんだ。(俺が居る時に限るだけど。)
褒めてやりたいと思ったのは、本心だ。
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