アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
うるさい
-
次の日、体育祭も終わって、教室の中は体育祭の話しで賑わってた。
クラスメイトで仲の良いグループの奴らは打ち上げをしたらしく、その話しや、昼休憩の時の弁当の話しをしてるダチ達の会話を小耳に挟みながら、俺は机に突っ伏していた。
「そういやさ、田中のお母さんの弁当美味かったよな!」
「そ、そうか?」
「あ!それ俺も思った!卵焼きの中に海苔入ってたよな?」
「それそれ!あれめちゃくちゃ好きだわ俺〜」
「あー、なんか俺んち昔から体育祭とかある日の弁当の卵焼きには海苔入れるんだよなぁ〜」
「へぇ〜、なな!今度田中の家行っていい?またあの卵焼き食いてえ!」
「わざわざ俺の家に来なくても母ちゃんに頼んで作ってもらうから、明日持ってきてやるよ」
「は!まじで!やった!」
昼休み、隣の席でそうはしゃぐダチ。
あまりにも大きな声で話しをしてたから、途中クラスの女子に「男子うるさい!」って注意されてた。
「…………」
珍しく、俺も同感だと思った。
うるさい。んなでかい声で喋るな。たかが弁当の卵焼きくらいで、何テンション上がったんだ。ってその話しを聞きながら心の中で呟いてた。
「なあ渋谷!お前も田中んとこの卵焼き食べたいよな?あれならお前の分も頼んで…」
ついに話しの矛先が俺に向けられる。
肩に手を置かれそう話しかけられたが、俺は一言「要らねえ」とだけ伝え、肩に置かれたダチの手を振り払い教室を出た。
「……なにしてんだよ俺…」
ダチは俺が見せた態度に戸惑いの表情を浮かべてた。教室が一瞬静かになってた。
「…………」
明らかに態度に出てる。こんなの八つ当たりだ。
「はぁ……」
大きなため息を吐きながら廊下を歩いた。
どこもかしこも生徒で賑わってて、周りが話しをしてる声が耳障りで仕方なかった。
そんな中、昼飯を買いに行こうと食堂にある売店に向かう。わいわいと人だかりが出来る売店で何とかパンを2つ購入し、その場を離れた。
今日は校内で静かに飯が食える場所はなさそうだ。
外で食べるか。
そう思い中庭へと出る。その途中、自動販売機で飲み物を買った。外のベンチに座って、これでようやく静かに飯が食える。
「えー!すごいそれ手作り?」
「えへへ、お母さんに教えてもらいながら作ったんだけど…」
「理恵のお母さんパウンドケーキ作れるんだ!いいなぁ〜、今度あたしも教えてもらいに行ってもいい?」
「もちろんだよっ、お母さんに伝えておくねっ」
ベンチの前を2人組の女子が通る。
手に持った手作り菓子を話題に、そんな何気ない会話をしていた。
「うるせえ……」
くしゃりと、開けたばかりのパンを握り締めてしまう。
いつも食べてる同じ売店のパン。それを買う為に渡されるお金。別に今日まで気にしなかったじゃねえか。
それに……こうやって、1人で昼飯食べるのも初めてってわけじゃない。今日、眼鏡は昼休みに先生と進路についての面談があるって言ってた。
いつもならあいつと飯食いながらくだらねえ話ししてたから、他の奴らの会話なんて耳にも入らなかったのに。
「さすがに、毎日パンってのは飽きるな……」
今まで、俺に対する母さんの態度なんて、考えもしなかったのに……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
493 / 617