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ご立腹
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「ごめん、遅くなった」
下校を知らせるチャイムとアナウンスが流れ始める頃、眼鏡がやって来た。
どうやら昼休みでの面談が長引いたらしく、放課後に持ち越ししたようで、その放課後の面談もついさっきやっと終わったというわけだ。
眼鏡に向けて、「遅せえよ」と素っ気ない言葉を放ち、俺は立ち上がり歩き出す。
「腹減ってない?どっか寄る?」
すぐに眼鏡は俺の隣まで歩みを進めて、ポソリとそんな事を言って来たけど、正直どこにも行きたくなんかなかった。
「………」
というより、家にも帰りたくない。
「お前の家…行きたい」
「俺の家?」
唯一、今俺が行きたいと思える場所。今はうるさい人混みの中に行くのは嫌だ。人に囲まれたくない。だけど、1人でもいたくない。
そんな自分勝手な気分から言った言葉だった。
「まぁ、俺は別にいいけど…」
眼鏡は視線を遠くの空へと向ける。
いつもなら「いいよ」って即答するのに、なぜか今日は乗り気な返事じゃなかった。
「んだよ、別に迷惑なら行かねえけど」
「迷惑とかじゃねえよ」
「……?じゃあなんだよ」
また、眼鏡はうーんと悩み込んだ。
そんなに悩む程の事ならはっきり『今日は無理』って言ってくれればいいのに。
「…………」
「…………んー」
歩きながら、時々眼鏡はそうやって考え込んでる声を出す。
わざとなのかそうじゃないのか分かんねえけど。
あと、横断歩道で止まる度に、俺の事をジロジロ見てくる。
それがたまらなくむず痒くてしょうがない。
「なんだよ‼︎来てほしくないならそう言えよ‼︎」
眼鏡の家と俺の家、そのどちらにも繋がる交差点で、眼鏡の曖昧な態度と返事にとうとう我慢が出来なくなった俺は勢いよく振り向きそう叫んでしまった。
「だから、来てほしくないとか思ってないって」
眼鏡はいきなり振り向いた俺を見て驚いてたけど、やがていつもの冷静な顔に戻ってそう言う。
「じゃあ、さっきからなんなんだよ…うーんとか、あー、とか……来てほしくなさそうな態度見せやがって…」
「あー、は言ってないけど…」
「…っ…い、言った‼︎」
まだ怒鳴り声を上げてしまう。
どうしてそんな小さな事に対してこんな大声上げてんだ。
通行人も見てる中で、なんで俺はこんなにもイライラしてんだ。
「どうしたんだよ……お前、最近なんかあったのか?」
「別に何もねえ……」
やっぱり今日の俺は変だ。いつもよりイライラしてるし、すぐにキレちまったり、別に何も悪くねえ眼鏡の事怒鳴ったり……
「もういい……帰る」
かっこ悪いにも程がある。
「おい新…」
「触んな‼︎」
「っ‼︎」
腕を掴まれ、思い切り振り払ってしまう。
「…ぁ………」
不意に取った自分の行動はすぐに罪悪感と後悔に追われる。
眼鏡は振り払われた自分の手の平をじっと見つめて、やがて俺へと視線を向けた。
「いい加減にしろよ」
「…っ…」
その眼鏡の顔を見るのは久しぶりだった。
ギロリと睨みを効かせる威嚇の目、全身に寒気が走って足が動かなくなる。
「どうして今日はそんなに機嫌悪いの?何かあったからじゃねえの?」
「…っ…だから……別に何も…」
じりじりとこちらに近づいて来る眼鏡をきちんと見る事が出来なかった。一歩ずつ俺は後ろに下がって、近づいて来る眼鏡の足元に視線を落としていた。
「言いたくないなら言わなくてもいいけど……」
その時、眼鏡が俺の腕を掴む。
眼鏡の方へと引き寄せられ、その時迂闊にも眼鏡の顔へと視線を向けてしまった。
「とか思ってたけどやっぱ無し」
「…へ………」
これは、かなりご立腹のご様子。
「無理矢理にでも吐かせてやる」
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