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生徒会の思い出
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会長が渡してきたのは、分厚くて赤いファイルのようなものだった。
なんだろうと思って会長を見上げると、「見てみて」と言われたから俺はゆっくりとファイルを開いた。
「こ、これ…」
開いた途端目に飛び込んで来たのは、今の眼鏡とは違うまだ少し幼さが残る眼鏡と、同じく幼さが残る会長と、その他知らない人が三人、うちの学校の制服を着て会長と眼鏡を囲って撮ってる写真だった。
「生徒会のアルバムだよ。僕が入った頃からのだけど」
会長はそう言って俺の隣に腰をおろした。
生徒会のアルバムだってことは、この知らない人三人は歴代の生徒会メンバーって事だよな?
てか、なんで会長はいきなりこれを俺に?
「実は今年から各メンバーにアルバムを渡そうと思っているんだ」
「アルバムをですか?」
「うん。舞園の提案でね。だから以前どんな写真を生徒会メンバーで撮っていたか気になって見てみたら、中々懐かしいものが出てきたから新に見せてあげようと思って」
なるほど、と相槌を打つと、会長が隣から手を伸ばし次のページをめくった。
「えっ、髪短っ‼︎」
そしたらそこに載ってた写真は、生徒会室のソファにドカリと居座り、不機嫌な顔をする眼鏡の写真。
眼鏡の髪は今に比べたら超短くて一瞬誰だか分からなかった。
「この頃ね、僕の前に生徒会長をしていた人がとても厳しい人だったんだ。特に頭髪。前髪が目にかかるのも許せない人だったから『生徒会メンバーたる者、容姿はきちんとしろ』って生徒会を引退する直前に成海に指摘したんだ」
「だからこいつこんな髪短いんですね」
「幼く見えるよね。初めは成海も随分と嫌そうな顔してたけど渋々散髪に行ってたよ」
「あいつが素直に従うとか……すごいですね前生徒会長……」
「そうだね。でも成海が髪を切ったのはこの時の一回きりだったよ。だからこんな成海の姿を新には是非見てもらいたいなって」
清々しい声で会長はそう話してくれたけど
会長、目が笑ってなくね?
………まぁ、それは触れないでおこう。
確かに、こんなあいつの最近の写真を見れるのは貴重な事だ。
あいつ、最近の自分が写ったアルバムとか持ってても絶対見せてくれないだろうし。
「あの、じゃあこの後ろの中央にいる人が前生徒会長さんですか?」
俺は一つ前の見開きのページに戻り、そこにあった集合写真の真ん中に立つ人を指さした。
「そうそう。怖そうな人でしょ?」
「怖いというか…」
ふふ、と会長が笑った。
怖そうな人というより、そこに写っていた真ん中に立つ人は丸坊主で目がキリリとした見た目野球少年。
見るからに真面目で厳しそうな人だなとは思った。
「今の会長と全然違いますね」
「んー、そうだね。僕はとくに頭髪の指摘はしないからね。前の会長よりは緩い方だよ」
「あ、そこですか……」
「え…そこじゃないの?」
「へへっ、いや…そこって事でいいです」
「?」
本当に、会長とは見た目も雰囲気も真逆で、それが少し面白くて笑えてしまう。
もし前生徒会長が籍を置いてる時に俺が生徒会に入っていたらソッコー丸刈り決定だったな。俺金髪だし。
つくづく会長が会長でよかった。
「思ったんですけど、この人が前生徒会長なら、残りの二人は誰ですか?」
「ああ、一番左の彼女が元副会長。こっちの一番右にいる彼が元会計。ちなみにこの写真は成海が生徒会に入ったばかりの頃の写真だよ」
んんん??
待てよ、じゃあ会長か眼鏡が書記してたってことか?1人多くねえか?
「ふふっ、混乱するよね。簡単に言うと、僕は初めの頃生徒会の書記をしてたんだ。成海がまだ生徒会に入っていない時ね。僕達が2年に上がってすぐだったかな……前生徒会長が僕を次期生徒会長に推薦して、引き継いで生徒会長になったんだけど、その頃の生徒会メンバーだった3年生は早めの活動引退を考えていたらしくて、僕が会長に就任すると同時に3年生は全員引退してしまってね。そこで、僕は早々に成海を生徒会副会長に推薦したんだ」
「へ、へぇ……」
なんて無責任な奴らだ。と思ったけど、会長が後に続けて言った言葉を聞いて納得せざるを得なかった。
どうやら、その3年生らが早めの引退を決意したのは進学と就職の為に勉強を優先してやる為だったという。
生徒会は色々と面倒で大変だしな……分かるっちゃ分かるけど……
いや、にしても無責任だ。
いくら会長が何でもできる人だからってそんな投げやりな……
「残りのメンバーもすぐに選ぼうと思ったんだけど、正直仕事は僕と成海の2人で回せていたからメンバーを選ぶのは後回しになっちゃって。そんな時、成海が君を生徒会に推薦していたから、とても驚いたよ」
「お、俺だって驚きましたよ…」
急に、全校生徒の前で生徒会書記に推薦されるし、あの時の眼鏡の印象だって最悪だったし、何よりぜってぇ俺に対する嫌がらせだと思ったし……
「でも今思えば、成海が君を生徒会に推薦してくれて良かったって心から思うよ」
「……………」
そう言った会長を横目で見てみる。
会長は懐かしそうに俺の手の中にあるアルバムに目を落としながらにこりと微笑んでいた。
「そうですね……悔しいけど、俺もあいつには感謝してます」
眼鏡も会長も、このアルバムの写真に写ってる時より大人っぽくなってる。
眼鏡が生徒会に入った後の写真は少なかったけど、ページをめくって別の前生徒会メンバーだった人達と一緒に写ってる写真を見ると、俺の知らないあいつと会長が知れたような気がしてすごくワクワクした。
前に、眼鏡の家であいつがちっちゃかった頃のアルバムをこっそり隠れて見てた時のような、あの感覚。
「俺、生徒会に入って良かったです」
次にこのアルバムに追加される写真には、俺と大崎も一緒なんだって思うと、どうしようもない程に嬉しい気持ちが湧き上がってくる。
「どう?新にとって、これは良いものだったかな?」
「はい、めちゃくちゃ良いものです」
その後も、昼休みが終わるギリギリの時間まで、会長と2人でアルバムを覗いていた。
アルバムを見ていて思った事、それは、好きな人達と一緒にいた時間を、こうして形にして残せるのって
結構良いな……ってこと。
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